味の素:「根拠」を明確化

 味の素は2017年7月、「統合報告書2017」を公表した。2年目となる今回の目玉は、非財務(社会価値)の目標と財務(経済価値)の目標を一体化させた「統合目標」である。

 2016年は経営トップのメッセージが明確である点や、「ASV」と呼ぶ味の素版CSV(共有価値の創造)の取り組みが具体的である点が評価された一方、物足りなさを指摘されてもいた。社会価値向上の取り組みがどのような経済価値を生むかを示し切れなかったのだ。そこで、2017〜2019年度の新中期経営計画で「統合目標」を定め、報告書にも掲載した。

 例えば、バランスの良い栄養摂取を促進することによって、「健康なこころとからだ」の実現に貢献する取り組みがある。肉・野菜の摂取量の目標とともに、うまみ調味料や風味調味料の販売量の目標を示し、売上高への貢献を明確に打ち出している。なぜ取り組むのかの「根拠」となるポリシーも策定した。投資家の指摘を受けて、「栄養」「食の安全・安心」「製品表示」の3つのポリシーを新たに追加した。

 CSR報告書の制作支援などを手掛けるクレアン統合報告支援グループの冨田洋史マネジャーは、「日本企業は、コミットメント、責任者、マネジメント体制、ポリシーといった情報が足りないケースが多い」と指摘する。

対話の場をフル活用

 味の素も投資家やアナリストと対話する場を通じて、積極的に意見を吸い上げている。毎年春に開催するESG説明会をはじめ、アナリスト向けの決算説明会、経営陣と投資家との直接対話の場など、1年を通じて頻繁に開催している。味の素グローバルコミュニケーション部の川崎嘉治・企画グループ長は、「ESG説明会で、ポリシーの情報が少ないことに気付かされた」と話す。

■ 味の素は「統合目標」を策定して投資家のニーズに応える
味の素の「統合報告書」にある「統合目標」の図(左)。非財務目標と財務目標の関係が簡潔に示されている。毎年春に開催している投資家向けのESG説明会(右)
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 非財務情報を充実させた「サステナビリティデータブック」は、ESG評価機関を主な対象に据え、情報の網羅性を重視する。評価機関のニーズに対応し、開示する項目は増え続けている。例えば2016年版には、従業員の定着率や離職率、メンタルヘルス休職者数などを追加して載せている。グローバルコミュニケーション部の長谷川泰伸CSRグループ長は、「人事データは情報の質と量が全く変わってきている」と話す。

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