大和ハウス工業:ESGを中計に組み込む

 「統合報告書」は機関投資家向け、「サステナビリティレポート」はESGの評価機関向け──。報告書の読者対象をはっきりと分けて作り方を大きく変えているのが大和ハウス工業である。

 CSR部ソーシャルコミュニケーション室の内田雄司室長は、「従来はマルチステークホルダーを対象にしており、従業員が自社を理解するツールとしても利用していた。しかし、現在は当社の企業価値を上げるための情報発信に特化している」と言い切る。

 例えば「サステナビリティレポート」では、事業の個別のプロジェクトに関わった人たちに登場してもらい取り組みをリポートする「読み物」を一切無くした。「評価機関の採点に全く影響しない」(内田室長)からだ。

 一方、情報の網羅性を重視し、ページ数が増えても評価につながる情報はどんどん追加する。労災件数や有給休暇取得率、離職率といったネガティブなイメージを持たれかねない情報も載せる。内田室長は、「取り組みが不十分だったとしても情報を開示して、会社としてどう考えているかを説明するのが大事。リスクへの認識を示すのが、一番のリスクヘッジになる」と言う。

中計の「トリセツ」目指す

 統合報告書は、現在、最新版を制作中だ。大和ハウス工業は創業100周年に当たる2055年度に売上高10兆円という目標を掲げている。2016年はこの目標にどうやって到達するかを示し切れなかったという反省から、中長期の価値創造ストーリーを組み立てているという。

■ 大和ハウス工業は統合報告書を経営改革に生かす
今年8月に開催した「サステナビリティ委員会」(右)。統合報告書やサステナビリティレポートに対する投資家らの評価を社員にフィードバックするのが目的だ
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 「統合報告書を出すだけでなく、ESGの要素を加味して経営しているかどうかが大事。統合報告書は、中期経営計画でESGにどう取り組んでいくのかを説明する『トリセツ(取扱説明書)』と考えている」(内田室長)。統合報告書に対する投資家の評価は社内にフィードバックし、指摘された点を改善する意向である。大和ハウス工業の経営は、統合報告書の制作をきっかけに大きく変わろうとしている。

(日経エコロジー2017年10月号から転載)