オムロン:企業理念を隅々まで浸透

 「SDGsは、自分たちが解決したい課題が当社の独り善がりでもなく、今までやってきたことの延長でもなく、国際社会が目指しているものと一致しているということを確認するためのもの」。オムロングローバルIR・コーポレートコミュニケーション本部の松古樹美ESG担当部長は説明する。

 オムロンにとって、今やSDGsは特別なものではなくなりつつある。サステナビリティを経営の中核に位置付け、時間をかけながら全社に浸透させてきたからだ。社員一人ひとりがサステナビリティを理解し、日常業務に落とし込めるように工夫もしている。

会長が対話に行脚

 経営層を対象にしたトップダウンの施策として、サステナビリティ方針に基づいて設定した重要課題への取り組みに関し、取締役会が監視・監督を担うと宣言した。さらに、中長期の業績に連動した報酬を、第三者機関のサステナビリティ指標による評価で決めるようにした。

 代表的なサステナビリティ指標であるダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス(DJSI)などに選定されるかどうかで報酬額が変わるため、経営層はサステナビリティを意識せざるを得ない仕組みになっている。

 立石文雄会長が世界の拠点を回り、各地の経営幹部と企業理念について対話するのも、サステナビリティを浸透させるためだ。

 2016年度は、「企業理念の実践と日常業務の繋がり」をテーマに設定し、マレーシア、インド、中国など計10拠点で対話を実施した。立石会長が、事業の責任者だった当時の自らの経験を語り、参加した経営幹部がお互いの実践事例を披露、共有したという。

 一般社員については、半期に1回、それぞれの部署が会議などでサステナビリティやSDGsに関して話をするようにしている。

 2012年度から始めた社内表彰制度「TOGA(The Omron GlobalAwards)」もサステナビリティを日常業務で意識させるのに役立っているという。

 事業を通じて社会課題を解決し、よりよい社会をつくる――。TOGAは、サステナビリティをうたった同社の企業理念を浸透させるための活動で、社員が実践している活動を報告し、優秀な取り組みを表彰する。社員がお互いに褒め、たたえ合うことで仕事のモチベーションが上がり、社会課題の解決とはどういうことかについて理解が深まるという仕掛けになっている。

■ オムロンは経営層から一般社員まで意識と行動を変える施策を実践
オムロンは、トップダウンとボトムアップの両面からサステナビリティを全社に浸透させる。写真は、立石文雄会長と経営幹部との対話(上)とTOGAの発表風景(下)
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 TOGAで2015年度に表彰されたのが、世界で流通する偽造医薬品の撲滅だ。主力のFA(ファクトリーオートメーション)部門で、SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」に貢献する取り組みである。

 欧州では、薬の成分がパッケージの表示内容と異なる偽造品が出回っており、これを服用した患者が死亡するケースも発生している。世界保健機関(WHO)によると、世界で流通している医薬品の24%が偽造品で、これが原因で年間約100万人が命を落としているという。

 そこで、オムロンのドイツ法人はメーカーの工場から薬局までの間で医薬品を追跡・管理するシステムの構築に協力した。具体的には、欧州指令によって薬のパッケージに表示が義務付けられているシリアル番号を、同社の画像センシング技術を活用して素早く正確に読み取るシステムを開発した。シリアル番号は正規品であることを証明するためのもので、流通経路でこれを管理することによって偽造品の混入を防げる。

■ 社会課題解決への挑戦が新しい事業のアイデアを生む
オムロンは、ドイツで偽造医薬品の撲滅に挑む。パッケージに表示されたシリアル番号を読み取り、薬のトレーサビリティーを確保するシステムを提供する(左)。英国でプロジェクトを展開中の「自動垂直農場」(右)。縦の空間を活用して限られた土地で食物の収量を増やす
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 この他にも、TOGAからはSDGsに貢献する事業のアイデアが生まれている。2016年度には、英国のFA部門の取り組みとして、IoT(モノのインターネット)を活用した「自動垂直農法プロジェクト」が発表された。広大な農地を確保するのが困難な都市部で、効率良く品質の良い食物を栽培するというものだ。SDGsの目標2「飢餓をゼロに」の貢献につながる。

 高層の栽培棟を使用するため農地を節約でき、消費地の近くで栽培することで輸送時のCO2排出量を減らせる。オムロンは、栽培棟内に苗棚用エレベーターを設置し、食物の成長状態を監視しながら棟内の環境を最適に制御するシステムを提供した。収穫時期になると苗棚が自動で下に降りてくるので、高い所で人が作業する必要がないという。

 SDGsの目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」への貢献が期待されるFA部門も、SDGsの視点で見直せば、健康や食料といった様々な社会課題の解決に貢献できることを示唆している。オムロンは今後、SDGsから気付きを得ながら、事業を広げていく考えである。

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