米国はFCV、中国はEV

 EVやFCVの開発を加速させるのは、ZEV規制への対応をにらんでのことだ。重要市場である米国や中国で規制をクリアするために、HVに次ぐエコカーの本命に位置付けるPHVを軸にしながら、EVやFCVを投入する。

 米国では、カリフォルニア州で既にZEV規制が施行されている。年間2万台以上を州内で販売する自動車メーカーは、16%をPHVやEV、FCVにしなければならない。達成できなかった場合、罰金を支払うか、目標を上回ったメーカーから「クレジット」を購入して不足分を補填しなければならない。航続距離に応じて重み付けを変えており、FCVはEVより多くのクレジットを稼げる。FCVならより少ない販売台数で規制をクリアできるため、トヨタはまずFCVで対応する考えだ。

 一方、中国は2019年からZEV規制と同様のNEV(新エネルギー車)規制を導入する予定である。販売台数の10%以上をEVかPHV、FCVにするよう自動車メーカーに求める。大気汚染が深刻な中国では、汚染物質を排出しないEVの購入に対して様々な優遇制度があるため、EVを売って規制をクリアするもようだ。

 これに対してCAFE規制は、HVの販売を拡大することでクリアする方針である。CAFE規制を導入している欧州では、2020年末までに走行距離1km当たりのCO2排出量を域内で販売した車の平均で95g以下に抑える必要がある。トヨタは既に欧州でHVの販売比率が50%近くになっており、EVやFCVに頼らずに済むとみられる。

 電動化を進めるのは、環境対応の一環でもある。同社は2015年10月に、2050年をターゲットにした長期環境ビジョン「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表した。その中で、新車から排出するCO22010年比で平均90%削減する目標を設定している。達成するためには電動車の開発を加速させる必要がある。

 エコカーは普及してこそ環境に貢献できると主張するトヨタが、EVベンチャーの米テスラをはじめとする新興勢力を交えた電動化競争をどう戦うのか。最大の武器に掲げるのが、HVを20年にわたって売り、培ってきた技術とノウハウだ。

 トヨタ自動車の寺師茂樹・副社長は、「1100万台のHVの販売実績があり、それを支える技術者は社内だけで4500人いる。これまで積み重ねてきた電動車の基盤技術が強みになる」と自信を見せる。

 1997年12月に初代プリウスを発売してから、2017年9月までに累計1109万台のHVを販売した。この間、燃費を約5割、ハイブリッドシステムのコストを約4分の1まで下げた。現在は、HV、PHV、FCVを合わせて37車種を90カ国以上で投入し、年間150万台を売る。電動車両の世界市場で40%以上のシェアを握る。

■ ハイブリッド⾞の販売実績
トヨタ自動車は足掛け20年でハイブリッド車を世界で累計1000万台販売した。環境負荷低減の面では、走行時のCO2排出量をガソリンエンジン車と比べて累計7700万tの削減効果があったと試算する
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 EVやFCVの開発も、HVと同じくモーター、蓄電池、PCU(パワー・コントロール・ユニット)が中核技術になる。トヨタは、この電動化に欠かせない三種の神器の開発で優位に立てるとみる。中でも重要な鍵を握る蓄電池については、現在、主流のリチウムイオン電池に代わる次世代電池を開発中だ。

 全固体電池と呼ばれるもので、リチウムイオン電池に比べて小型で大容量な上、安全性も高い。2020年代前半には全固体電池を搭載したEVを実用化する予定である。

 大和証券企業調査部副部長の箱守英治シニアアナリストは、「EVに関して言えば、よほどエポックメーキングなリチウムイオン電池が出てこない限り、どのメーカーも同じような蓄電池を使うことになる。そうなるとモーターを含めてどうコントロールするかが重要になり、HVの開発で長い歴史があるトヨタに優位性がある。さらに、全固体電池の開発で先行しており、ゲームチェンジャーになり得る」と話す。

 課題は原材料調達である。年間100万台規模のEVを売るとなると、「HV数千万台分」(寺師・副社長)という膨大な量の蓄電池が必要になる。蓄電池をリユース・リサイクルする事業モデルを構築し、安定供給を確保する必要がある。