相馬 隆宏(日経エコロジー)

ビールや清涼飲料などに使う水を育む森林整備にまい進する。「天然水」を前面に打ち出し、エコで企業価値を高める考えだ。

 環境貢献(エコ)を企業価値にする──。今から6年前、サントリーホールディングスは、それまで社会での責任を果たすことと捉えられていた環境活動を経営に生かすべく、大きくかじを切った。

 それを端的に表しているのが、組織名称の変更である。「エコ戦略部」。サントリーの環境部門は、環境推進部や環境対策部といったありふれた名称とは異なる珍しい呼び名が付いている。それまでは時代の変化に伴って名称が変わり、生活環境室や環境部などと名乗ってきた。

 現在のエコ戦略部になったのは2010年春。「名は体を表すのだから、何か考えてみてくれないか」。社会や消費者に対して、環境への取り組みを価値として戦略的に提供していく方針を明確にした、佐治信忠社長(当時)の一言がきっかけだった。環境戦略部を提案したところ、「これからはエコの時代だ」と付き返され、エコ戦略部に決定した。

 この話には続きがある。役員会議で名称が決まってから間もなく、佐治社長から担当役員に連絡が入った。「やっぱり本部ぐらいにしないと重みがないな」。この1カ月後、「エコ戦略本部」が設置された(現在はコーポレートコミュニケーション本部に組織改変している)。その下にあるのは、エコ戦略部だけにもかかわらずだ。

 単なる部署名変更と思うなかれ。サントリーはそれだけ本気で、エコで企業価値を高めようとしている。

総勢6000人の社員を森へ派遣

 業績に目を向けると、売上高、営業利益ともに伸びており、2016年12月期は過去最高益を見込む。消費者からの評価も高い。日経BP環境経営フォーラムの「環境ブランド調査」では、2011年から2015年まで、環境先進企業として知られるトヨタ自動車やパナソニックを押さえて5年連続で首位を獲得している。

 業績好調で環境ブランドイメージも高い。それでも、手綱を緩めることはない。

 同社の環境活動を象徴するのが、2003年に始めた「天然水の森」活動だ。ビールやウイスキー、清涼飲料などの原料となる「水」は最も大切な経営基盤である。その品質と量を保つためには、森林が十分な水を蓄え、地下水に導くよう良質な土壌が不可欠だ。

 サントリーは水源となる森林を「天然水の森」と名付け、地元の森林組合や林業会社などと協力して、植林や枝打ち、下草刈り、間伐などをしている。森林を保有する国や自治体には長期整備方針を説明し、土地貸与協定を交わす。

■ 営業など総勢6000人が「業務」で森林整備
地元の森林組合などの指導の下、枝打ちや下草刈りといった作業に精を出す社員たち。商品を作るのに必要な水源となる森林を守る

 2014年から、この活動に参加する社員の対象を拡大した。従来は工場の社員だけだったのを、営業や商品開発など総勢6000人の社員に広げた。土日にボランティアで参加する形態だったのを改め、平日に業務の一環として参加してもらう。当然、出張旅費などは会社が負担する。参加したかどうかは人事の記録にも残るので、一定の強制力もある。