「天然水」ブランドを強くする

 10年以上続けてきた歴史ある活動をテコ入れするのは他でもない。エコを商品競争力により強く結び付けるためだ。

2014年に展開した「サントリー天然水」の期間限定デザインラベル。水源に生息する鳥をカラフルに描き、水を育む森を守る姿勢をアピールした

 サントリーには成功体験がある。それは、2014年にミネラルウオーター「サントリー天然水」で展開した期間限定デザインラベルで、水を育んでいる自然環境の豊かさを訴求したこと。天然水は製造拠点によって原料の水が異なり、南アルプス、奥大山、阿蘇の3種類がある。ラベルにそれぞれの水源に生息する鳥を鮮やかな色で描いた。従来はシンプルな山が描かれているだけだった。この頃から、テレビCMも水源の山を意識させる内容に変更している。

 天然水は、2013年以降、炭酸入りの「サントリー 南アルプスの天然水 スパークリング」、果汁を加えた「サントリー 南アルプスの天然水&朝摘みオレンジ」といった新商品を投入したことと相まって、ここ3年間の販売数量は2ケタ成長を続けている。2015年4月に発売したヨーグルト味の「サントリー 南アルプスの天然水&ヨーグリーナ」は、売れ過ぎで発売直後に出荷を一時停止したのは記憶に新しい。

 天然水の成功で、エコ戦略部にとって何よりの収穫だったのが、森林整備の賜物である水源の価値をラベルのデザインに落とし込み、消費者に訴求したことである。天然水のマーケティング担当者がそうしようと考えたのは、森林整備を体験していたからだ。

 「水源を確保するためになぜ森林を整備するのかが分からなかった人も、森に入って実際に体を動かすことで腹に落ちる。天然水のマーケティング担当者たちは活動の意義を理解し、エコが商品の価値になると思ってくれた」と、サントリーホールディングスコーポレートコミュニケーション本部企画部長/エコ戦略部長の内貴研二氏は話す。

 天然水の販促で起こったことを、他の商品にも広げたい。そのためには、顧客に直接商品を売る立場にない工場の社員だけではなく、営業など顧客により近い所にいる社員にも森林整備を体験してもらう必要がある。「活動内容はホームページで発信しているが、商品を通じて価値を伝えるには、ビジネスの第一線に携わる人たちが理解していないといけない」(内貴部長)。

 例えば、営業が卸業者を訪問した際、サントリーが水源の森を守るためにどれだけ努力しているかを自分の言葉で説明できるようになれば、「天然水」ブランドはより強く輝く。

■ 森林整備を価値に「天然水」の売り上げを押し上げる
※1 プレーン、炭酸、フレーバーウオーターの総数
※2 出所:飲料総研「飲料ブランドブック」

 森林整備体験研修には、2014年からの約2年間で約3500人が参加した。いつどの森林にどの拠点の社員を何人派遣するか。綿密な計画に基づいて、エコ戦略部が人事部門と共同で開催する。

 2015年10~11月は、秋川・赤城・西脇・阿蘇の4カ所で実施し、合計950人が森に入った。このうち西脇では、東海・北陸の営業社員、近畿の営業社員、大阪本社のスタッフ、中四国の営業社員など100人が作業に汗を流した。

 研修のおおまかな流れは次の通り。早朝8時ごろに駅に集合してバスで現地に移動、10人ぐらいのグループを作り、森林組合などの指導を受けながら1~2時間活動する。その後、昼食を取って15時ごろに解散する。これだけ多くの社員を引き連れて活動するのはエコ戦略部にとっても骨の折れる仕事だ。内貴部長は、「ほとんど旅行代理店や林業会社のようです」と笑う。

 手応えはある。研修に参加した社員たちからは、「これからは得意先にきちんと説明できる」「こんな研修を全社員に受けさせるなんてサントリーらしい」といった声が上がっているという。会社に対するロイヤルティーが上がったことに加えて、これまで一緒に仕事をしたことのなかったグループ会社の社員と、自然環境の中で濃密な時間を共に過ごしたことで、一体感も生まれている。