富岡 修(日経エコロジー)

ZEHの販売比率が7割と、政府の2020年目標の5割を大きく上回る。マンションや街でも省エネ・創エネを徹底して事業拡大を目指す。

 新築戸建て住宅メーカーで国内最大手の積水ハウスは、エコ住宅の代名詞といえるネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の販売比率が2015年度で7割に達した。この値は、政府が2020年までにZEHの販売比率を5割まで高めるという目標を大きく上回っており、エコ住宅メーカーのトップランナーといえる。

3期連続で過去最高益を更新

 業績も好調だ。2015年度の業績は、売上高は前年度と比べて約3%減少の1兆8588億円だったものの、営業利益は3期連続で過去最高を更新して1496億円になった。主力の注文戸建て事業は消費増税の反動減もあって減収減益だったものの、賃貸住宅やマンション、ニュータウンなどの分譲住宅事業などの利益が伸びた。

 3期連続で最高益を更新できた理由の1つが収益構造の転換が進んでいることだ。2010年度の営業利益の構成比は、注文を受けて戸建て住宅や賃貸住宅を建てる請負型が77%を占めていたが、2015年度は66%まで減少した。

 新たな稼ぎ頭として存在感を増しているのが開発型だ。分譲住宅、マンション、都市再開発、国際事業からなる。営業利益は2010年度の22億円から、2015年度は390億円に増加した。国際事業は米国やオーストラリアは好調だが、中国事業が低迷して56億円の赤字だった。それを補ったのが、国内で展開するマンションやニュータウンなどの分譲住宅事業である。

■ 3つの分野で事業拡大を目指す
■ 営業利益の伸びが著しい開発型事業

 新築戸建てでは最大手といえども、分譲住宅やマンションでは他社の後塵を拝している。多くの競合が存在し、今後の需要も人口減少で縮小が見込まれている。そんな厳しい市場で差別化を図るために、省エネや創エネを駆使した得意のエネルギー管理を前面に出して勝ち残りを目指している。

 2月下旬、今後のマンション事業を占う計画を発表した。再開発で賑わうJR大阪駅に近い「グランドメゾン大淀南タワー」(仮称)と、大阪城の近くに位置する「グランドメゾン内久宝寺タワー」(仮称)という2棟の超高層マンションである。前者は39階建てで住戸数は298戸、後者は38階建てで住戸数は245戸だ。

燃料電池を全戸設置

■ 世界初となる超高層マンションの全住戸に燃料電池を設置
左のパースは39階建ての「グランドメゾン大淀南タワー」。右の写真はバルコニー設置できる小型燃料電池

 積水ハウスは2棟のマンションの全住戸に、大阪ガスが開発した約200万円する新型燃料電池を設置すると発表した。超高層マンションでの燃料電池の全戸採用は国内はおろか、世界でも初めてだという。

 マンションはLED照明や家庭用エネルギー管理システム(HEMS)などの導入で省エネは進んでいる。だが、一戸当たりの外壁や屋根の面積が小さいために、太陽光発電が十分に利用できないなどの理由で創エネが進んでいなかった。

 「マンションで創エネをするための切り札が燃料電池だ。小型化と耐風性能の向上でバルコニーに設置できるようになった。大阪ガスに売電できる魅力もあり、全戸採用を決断した」と、積水ハウスの石田建一常務執行役員は狙いを話す。

 採用する新型の燃料電池は1日中、700Wの定格発電を行う。各住戸の電力使用が700Wより小さい場合、余剰分を大阪ガスに売電できる。大阪ガスの試算では、専有面積が80m2で3人家族が使用した場合、燃料電池がない場合と比べて、電気代は年間で約10万円程度節約できるという。これに余剰電力の売電収入が加わる。

 燃料電池の全戸採用によって、同規模のマンションと比較して一次エネルギー消費量を25%削減できる。この削減量は、積水ハウスが2008年に建設した同規模のマンションの共用部に使われる一次エネルギー消費量に相当するという。戸建て住宅のようなネット・ゼロ・エネルギーには及ばないが、削減が難しかったマンションでは大きな一歩といえる。CO2排出量は、同規模のマンションと比較して40%の削減になる。

 2棟のマンションの完成は2019年を予定している。積水ハウスによると販売価格と販売時期は未定だが、2016年度中には販売される見込みだ。マンションの販売価格は、仮に燃料電池代約200万円の全額が上乗せされたとしても、電気代の削減額を年間10万円として試算すると、20年で回収できる計算になる。売電収入を加えると回収期間はさらに短くなる。