自営線で電力融通

 宅地開発の分野では、街全体でエネルギーを賢く使うプロジェクトに関わっている。

 宮城県東松島市は、仙台市の中心部から約40~50km離れた場所に位置する。そこにネット・ゼロ・エネルギーの街づくりに向けて一歩を踏み出したニュータウンがある。東松島市が事業主で、積水ハウスが建物の設計や施工などを担当した災害公営住宅「東松島スマート防災エコタウン」だ。2015年8月から東日本大震災の被災者が入居している。

 敷地内に立って周囲を見渡すと新築住宅が並ぶ一般のニュータウンの光景と変わらない。国内初の仕掛けが施されているのは、地上に新設された電柱や地下に埋設された電線からなる自営の電線だ。これによって敷地内の住宅はもちろん、敷地外の施設ともつないで、電力の相互融通を可能にした。

 この災害公営住宅では、敷地内の戸建て住宅70戸と集合住宅15戸、周辺の4つの医療機関と公共施設を結んで約4kmのマイクログリッド(小規模発電網)が構築された。敷地内には470kWの太陽光発電設備と、500kWhの大型蓄電池、非常用のバイオディーゼル発電機500kWなどを設置した。これらをコミュニティーエネルギー管理システム(CEMS)で制御してエリア内で電力融通を行う。

■ 自営線による地区間の電力融通を国内で初めて実現
災害公営住宅の全景。左手中央に見えるのが太陽光発電パネル。敷地内は敷設した電柱、敷地外は地下に電線を埋設して自営線を構築した

 太陽光発電で得た電気による電力融通は、4月から実施する。東松島市によると、太陽光発電で賄えない場合、当面は東北電力から購入する。しかし、いずれは大規模太陽光発電所(メガソーラー)やゴミ焼却発電などの低炭素な電力を調達してエネルギーの地産地消を目指すという。

 電力の地産地消を実現するには、電力消費パターンが異なるエリアを結ぶ必要がある。東松島市は石巻市や仙台市のベッドタウンということもあり、災害公営住宅の居住者の多くは、日中は主に仕事や学校などに出かけており電力消費量は少ない。一方、医療機関は日中の消費量が多い。夜間になれば、両者の消費量は逆転する。

 再生可能エネルギーの買い取り価格が下がる傾向にある中、発電した電気を売らずに地産地消を進める動きがあるが、その際の障害となっている理由の1つが電力会社に支払う託送料が高いことだ。しかし、自営線によるマイクログリッドの構築は1つの解決策となる。

電力の地産地消で地方創生

 「東日本大震災の復興支援や防災時の対応が第一義にあるからこそ、国内で初めて敷地を越えてマイクログリッドを構築することができた。再エネで発電した電気を、電力消費が異なるエリアを結んで融通することで、より効果的な節電が期待できる。節電した金額を投資や消費に回すことで地方活性化にもつながる」と積水ハウスの東北復興開発事業部の三国富夫・事業部長は意気込む。

 積水ハウスは「スマートコモンシティ」というブランド名で全国16カ所のニュータウンを展開している。現時点でニュータウンに自営線を張って電力融通することは設備機器や工事費が高いなどの理由で難しいようだ。しかし、東松島市のようにニュータウン単体ではなく、公共施設や工業団地など電力消費が異なるエリアを結んで効果的な電力融通ができれば、街全体をスマートタウン化することができる。自営線を使った都市開発は、中長期的に見て積水ハウスの強みになるかもしれない。

 2016年度は、2014年度に策定した中期経営計画の最終年度に当たる。業績目標は高く、売上高は15年度比6.8%増の1兆9850億円、営業利益は13.6%増の1700億円だ。開発型事業の営業利益は545億円と、15年度より4割高い目標を掲げており、期待の高さが分かる。

 同社はこれまでZEHに代表される戸建ての省エネを推進してきた。今後はそこで得た技術やノウハウをマンションなどの集合住宅、その先には街全体に広げることで、更なる業績拡大を目指す。