藤田 香(日経エコロジー)

事業の成長は、顧客と地域社会の発展とともにあることを貫く。持続可能な調達とエコストアに力を入れ、客が集まる町の拠点を目指す。

 身の締まったギンザケの切り身がショーケースに所狭しと並べられ、客がトングで袋に入れていく。

 4月15日、イオン新浦安店で環境や社会に配慮して養殖されたASC(水産物養殖管理協議会)認証のギンザケが新発売され、記者発表会が開かれた。ショーケースの周りには、このサケが持続可能な方法で養殖されたことを説明するポップが躍り、客が真剣に読んでいる。

環境や社会に配慮した養殖業を示すASC認証のギンザケを4月に全国で発売した。認証水産物だけを並べた「フィッシュバトン」コーナーを各店に順次設け、消費者にアピールする
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 ダイエーの旗艦店だったこの新浦安店は、3月にイオン傘下に移行したばかり。焼いて塩鮭として食べるギンザケは日本人の定番メニューだ。集客力のあるこの店で環境や社会に配慮した人気食材を大々的に売り出したことに、イオンのこの商品にかける強い思いが感じられる。この日イオンはASC認証のギンザケを全国1000店舗で発売した。

 これに先立つ4月2日には、東日本大震災の被災地、宮城県南三陸町で養殖された日本初のASC認証のカキを101店舗で発売した。2006年にアジアの小売りで初めて、持続可能な漁業で取られたことを示すMSC(海洋管理協議会)認証の天然魚を発売したイオン。以来一貫して、MSCやASC認証の水産物にこだわって販売を続けてきた。認証水産物の売り上げは数十億円規模とみられ、それほど大きいわけではない。

 しかし、ここにきて2020年の東京五輪開催が決まり、世の中の動きがイオンに追い付いてきた。今後発表される調達コードでは、五輪会場で提供する水産物は認証取得などの持続可能な製品だけに限られる可能性が高く、売り上げ拡大が期待できる。10年続いたこの取り組みが、同社のサステナブル経営の象徴的な活動になろうとしている。

「モノ」から「コト」へ

 人口減少と少子高齢化が進み、国内市場が縮小するなかで、小売り店舗の在り方は変貌を強いられている。イオンは「モノ」から「コト」への転換を掲げる。単にモノを売る場から様々なコトを体験できる場へ。カフェがあり、カルチャー講座があり、人々が交流し合う場だ。

 同社が2011年に制定したサステナビリティ基本方針は、2020年に向けて「多くのステークホルダーとともに持続可能な社会の実現を目指す」ことを打ち出した。持続可能な社会とは何か。「事業の成長とともに地域社会の発展があることだ」と金丸治子・グループ環境・社会貢献部長は説明する。

 同社はそれまでも環境経営を進めてきたが、2011年から顧客や地域社会の視点を一層重視した。サステナブル経営のためには、廃棄物の削減も持続可能な食材の浸透も顧客や社会とともにサプライチェーン全体で進めなければ効果が上がらない。

 顧客とサステナビリティを進める例が冒頭に紹介した持続可能な水産物の取り組み、地域とともにサステナビリティを進める例がエコストアなどの展開だ。象徴的なこの2つの取り組みを見ていこう。