10年後に売上高を1.5倍に

 

 中期経営計画では、この3年間を長期的な成長のための基盤固めの時期と捉え、2025年度の事業イメージも併せて公表した。

 

 現在の同社の主力は、鉄道車両、2輪車、商船などの陸・海輸送システムで、売り上げの約4割を占める。今後10年間は、高い収益性が見込めるエネルギー・環境や、産業・医療用ロボットなどの分野に重点的に投資し、売上高2兆4000億円を目指す。

 

 その上で、特に重点分野と位置付けたのが、水素事業を含むエネルギー・環境分野だ。現在の売上高比率は13%程度だが、2025年度にはこれを20%に引き上げる。

■ 水素事業を成長の柱に据えた
売上高と事業分野別の売上高構成比率。水素事業を含むエネルギー・環境事業を成長の柱と捉え、今後、売上高構成比率を高める
 

 こうした長期戦略は、将来のありたい姿を描き、経営の方向性を示すことが目的であるケースも多い。しかし、水素社会の実現が国家戦略として位置付けられた今、数値目標の実現が現実味を増してきた。

 

 同社が水素を成長の柱に据えたのは、水素を作る、貯める、運ぶ、使うというすべてのシーンにおいて関連技術を持っており、既存技術との相乗効果が高いと考えたからだ。

 

 水素の製造については、水素を大量に生成する肥料製造工場などを手掛けていたため、水素を取り扱うプラント建設の知見があった。液化は、航空機や産業用のガスタービンエンジンの開発で培った技術が応用できる。貯蔵や陸上輸送は、H-IIロケットの燃料輸送などで運用実績がある。

 

 水素ガスタービンの開発で武器となっているのが、発電プラント建設で培った環境技術だ。

 

 水素は、燃焼速度が速いという特性があり、天然ガス燃焼時の約2倍のNOx(窒素酸化物)が発生してしまう。そのため天然ガスと水素を混焼し、水を使って燃焼温度を下げることで、NOxの排出を抑える技術を開発した。2015年5月に兵庫県の明石工場で1700kW級の発電機として実証運転を開始した。

 

 100%水素を燃料とした水素専焼ガスタービンの開発も進めている。水素を燃やした際の火炎を微小に制御することで燃焼温度を低く抑え、水を使わずに低NOxの燃焼を可能とする。こちらは2017年に技術の確立を目指している。

 

 液化水素の海上輸送は、世界中のどの企業も実用化できていない。川崎重工は、水素の貯蔵とLNG運搬船の技術を水素運搬船に応用する。

 

 現在、2500m3の液化水素を運べる液化水素運搬船を開発中だ。運搬船に搭載する貨物格納設備の基本認証を2014年2月に日本海事協会から取得している。

 

 液化水素輸送のための国際規格を日豪共同で国際海事機関に提案中で、早ければ9月にも承認される見込みだ。承認され次第、世界初の液化水素運搬船の建造に着手する。