水素チェーンのすべてを握る

 

 こうした技術開発の中核を担っているのが、本社技術開発本部の「水素チェーン開発センター」である。船舶海洋カンパニー、プラント・環境カンパニー、ガスタービン・機械カンパニーなどが持つ技術を見通し、どの技術を組み合わせれば目的の開発を実現できるかを見極める。

 

 西村副センター長は、「水素サプライチェーンのすべてを握りたい」と意気込む。

 

 水素社会の実現には、街全体のインフラを見通し、どこにどのような設備が必要かを判断・指揮するコーディネーターの役割が必要となる。これは、水素を作る、貯める、運ぶ、使うというすべてのシーンの知識と技術を持つ企業だけが担える。目指すのは、総合水素企業のトップランナーだ。

■ 製造・輸送・発電を一手に担う「総合水素企業」を目指す
 

 水素開発に乗り出している国内外のライバルは増えている。

 

 水素の運搬は、JXエネルギーや千代田化工建設も取り組んでいる。産業用ガスで世界大手の仏エア・リキードや独リンデは、欧州で天然ガスのパイプラインを使った水素運搬に乗り出した。水素発電は、米ゼネラル・エレクトリックや三菱重工業が開発を進める。

 

 今後、こうしたライバル企業との競争はいっそう激しくなる。勝つためには、常に技術でリードし続ける必要がある。低コスト化や標準化など、他社を巻き込んだ戦略も求められる。司令塔となる水素チェーン開発センターが、一歩先を見通した戦略を打ち出し、それに応える素早い経営判断ができるかどうかが課題となる。

 

 水素社会実現への取り組みは、この先10年、20年と続く。20年後にトップランナーであるためには、長期を見据えた技術開発が欠かせない。短期の業績に左右されず、ブレない経営ができるかどうかが、これまで以上に問われるだろう。