相馬 隆宏(日経エコロジー)

竹中工務店は自社ビルや顧客のビルで、「売れる環境技術」を開発する。「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」を武器に受注を拡大する考えだ。

竹中工務店の東関東支店。2003年に竣工したビルを、エネルギー消費量が実質ゼロのZEBに改修した
写真:新建築社

 製鉄所や食品工場などが集積する千葉県の京葉工業地域に建つ竹中工務店の東関東支店。一見変わったところがないように見える築10年以上経過した2階建てのビルが、国内随一の省エネビルだと聞いたら驚くに違いない。

 竹中工務店は、2003年に竣工したこのビルを2015年10月から2016年3月にかけて改修した。エネルギー消費量が実質ゼロの「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」に生まれ変わらせた。改修前と比べてエネルギー使用量を約7割削減、残りの約3割を太陽光発電で賄う。電気代の節約効果によって、改修費用は15年で回収できる見込みである。

7000億円の市場に

 これまで、新築では大成建設がZEBの実証用に建てたビルでエネルギー収支(電力の発電量から消費量を引いた値)ゼロを達成しているが、既存のオフィスでZEBを実現した例は珍しい。竹中工務店は東関東支店の改修で得たZEBの技術やノウハウを武器に、受注拡大につなげる考えである。同社の車戸城二・執行役員は、「東関東支店で採用した技術は売れる。ここでの実績を踏まえて、ビルオーナーや投資家にアピールしていく」と意気込む。

 竹中工務店の業績は好調で、2015年度は連結で売上高が1兆2843億円、営業利益が598億円となり、3期連続増収増益を達成した。特に利益率の改善が著しい。2012年度は、2011年3月の東日本大震災後に民間の建設投資が冷え込んだため13億円余りの営業損失を計上したものの、2013年度から営業利益は5倍に増えている。

■ 営業利益は2年間で5倍に急増

 省エネなど環境に配慮したビルの建築・改修が業績を押し上げている模様だ。グローバル企業を中心に環境配慮の姿勢が評価されるようになり、デベロッパーにとって省エネ性能の高いビルを建築することがテナント獲得の要件になりつつある。竹中工務店設計本部プリンシパルエンジニア(環境担当)の高井啓明氏は、「環境性能に優れ快適なビルを建てることが受注につながる」と話す。

 国土交通省の調査によると、オフィス選定時に環境に配慮しているビルかどうかを考慮するという企業は約4割で、光熱費などのコスト削減や快適性・生産性の向上を理由に挙げる。今後、環境配慮を考慮することを検討している企業も約3割おり、移転する際に環境配慮ビルを選択する企業が増えそうだ。

 この先、環境配慮ビルの先端を行くZEBの需要は大きく拡大する。矢野経済研究所は、建築費や建築設備費などを合計したZEBの市場規模は、2020年度に892億円、2030年度に7059億円に拡大すると予測する。

 日本は2030年度に温室効果ガス排出量を2013年度比26%削減する目標を掲げる。オフィスなどの業務部門は家庭部門と並んで対策が遅れていることから、同期間に40%削減という厳しい目標を掲げて重点的に取り組む。経済産業省は、ZEBの実現に寄与する高性能な建材や設備の導入に補助金を出す。技術開発を促進し、2030年までに新築建築物の平均でZEBの実現を目指す。

 竹中工務店はZEBの普及へ向けて、新築だけでなく既存ビルの改修でも省エネ技術や再生可能エネルギーを導入する。国の温暖化対策にとっても、オフィスの98%を占めるとされる既存ビルの省エネが最も重要になる。そのモデルケースとなる東関東支店ではどうやってZEBを実現したのか。詳しく見ていこう。