ZEBの価値を体感させる

 車戸・執行役員は、「ZEBの投資回収期間は、新築なら約7年、改修なら約15年になる見込み。これくらいの期間ならやってみようという顧客が相当数いるのではないか」とみる。東関東支店の改修費は3億円程度と推測される。建築費用を抑えて投資回収期間を短くすることは重要だが、顧客に決断させるためにはZEBの価値をどれだけ分かってもらえるかが勝負になる。

 竹中工務店の営業担当者は、これまでに手掛けてきた物件に見込み客を連れて行き、省エネでありながらいかに快適で働きやすいオフィスかを体感してもらうことで背中を押す。東関東支店の他にも自社や顧客のビルで、ZEBに迫る省エネ性能を持つビルを建築してきた。手掛けた物件を冊子にまとめた事例集も作っている。

 快適さを感じられるビルには、例えば2011年に東京都千代田区に竣工した飯野ビルディングがある。LED照明を全面採用した他、湿度を調節して快適さと省エネを両立するデシカント空調などを導入している。建築物の環境性能を評価するLEED認証で最高評価のプラチナを取得した省エネビルの好例だ。

■ 2050年に向けた竹中工務店の長期目標

 今後は、2050年を目標とする長期ビジョンに沿って、ZEBの普及を加速させる。2030年にZEBを定着させ、さらにはエネルギーの消費量を創出量が上回る「ネット・プラス・エネルギー・ビル(PEB)」の実現を目指す。東関東支店はエネルギー収支がプラスになる可能性もある。ZEB普及の課題はコスト。竹中工務店は再生可能エネルギーを積極的に利用する方針だが、設備が割高になる。まずはこのコストを下げることが先決だろう。

 足元では、2020年の東京オリンピックに向けて競技場や宿泊施設の建設、インフラの整備といった工事が増えており、建設業界は特需に支えられている。オリンピック後にも途切れることなく需要を掘り起こせるか、ZEBをはじめとする環境技術の真価が問われそうだ。

湿度を調節して快適さと省エネを両立するデシカント空調を導入。吸湿材の機能を回復させるために太陽熱を利用する(左)。一年中温度が安定した地中熱を利用して空調の省エネを実現した(右)