ギャップシニア層に着目

 要介護シニアに対しては、認知症など要介護者を対象に、独自の教育をしたケアスタッフが家事代行や見守りなどの生活支援を行う。一方、元気なシニアに対しては、既存の家事代行サービスや害虫駆除、ハウスクリーニング、住まいの補修など様々なサービスの販売を強化することで、顧客の獲得を狙う。要介護シニアや元気なシニア層へのアプローチは、訪問モデルの強みを発揮しやすいこともあって、事業は順調に拡大している。しかし、一方で競合も多く、競争が激しい。

 そんな中、同社が注目するのが、要介護シニアと元気なシニアの間に位置する「ギャップシニア」といわれるサポートが必要なシニア層だ。介護の必要まではないものの、身体能力の衰えや健康に不安を抱え、生活することに自信がなくなったり、不自由さなどを感じる高齢者を指す。個人差や性別差が大きいものの、後期高齢者と呼ばれる75歳以上になると増えるという。

 ギャップシニアに対する同社のアプローチは、予防を働きかけたり、生活支援したりすることで要介護者になる人数や期間を減らすことだ。

■ 高齢者向けのサービスを拡充
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 2016年1月、ダスキンは埼玉県和光市と公民連携協定を締結し、「わこう暮らしの生き活きサービスプラザ」を開設した。事業内容は、高齢者から日常生活の不安や困りごとの相談に乗り、その相談内容に応じた情報提供や商品、サービスなどを紹介する。ダスキンが運営する。

 きっかけは、日本総合研究所が主管する「ギャップコンソーシアム」。ダスキンなどの企業や自治体が参加する。

 総務省などによると、2015年は75歳以上の後期高齢者が1210万人、要介護者が350万人いるのに対して、2025年には後期高齢者は1720万人、要介護者は500万人に上るという試算がある。

 高齢化社会が進むにつれ、介護保険の財源や労働力の確保は難しく、保険や施設の利用を抑制する必要がある。要介護者になる人を減らすことは、社会課題の解決に合致する。

 両者の取り組みは注目されており、成果を出せば追随する自治体があり、事業拡大の可能性は大きい。

外国人による家事代行で先行

 高齢化に加えて、女性の社会進出や単身世帯者が増加する中、今後も拡大が見込まれている家庭向けの事業が家事代行サービスだ。今後、需要が拡大すると労働力の確保が問題になる。そう考えて、同社は外国人による家事代行サービスに先行して取り組んでいる。

 ダスキンは、政府が国家戦略特別区域で進める家事支援の外国人受け入れ事業で神奈川県、大阪市、東京都から認可を受けた。2017年4月、同社はフィリピン人従業員8人を受け入れた。現在、神奈川県と大阪市の直営拠点で家事代行サービス「メリーメイド」の業務に従事している。

家事代行業務に従事するフィリピン人

 日本とフィリピンが定める外国人の受け入れ条件は厳しい。1年以上の実務経験があり、習得に膨大な時間がかかる日本語能力試験(N4)に合格しなければならない。「日本語を熱心に勉強し、来日して働いてくれることはうれしい。意欲ある働きぶりに顧客の評価も高い」と家事代行などの役務サービスを統括する岡井和夫常務取締役は喜ぶ。

 年内には新たに4人が来日して東京の拠点で働く。現在は特区だけでの運用とダスキンの直営拠点でしかできないため、すぐに事業を拡大できるわけではない。しかし、「将来、市場が拡大した際、担い手として外国人は欠かせない。ダスキンがなくてはならない存在になるため先行して取り組む」と岡井常務は話す。

 労働力確保や人手不足を解消するための方策は他にもある。例えばAI(人工知能)やロボットを活用する無人化や効率化なども1つだ。

 だが、ダスキンは一貫して人材と教育にこだわる。ハイジーンマスターや家事代行を担う外国人の育成には時間がかかるが、他社に先駆けて確立すれば、競争力は高まる。

 今まいているタネから花を咲かせ、果実を収穫できるのか。社会の困りごとをお役立ちに変えられるかが、次の成長への試金石になる。