富岡 修(日経エコロジー)

東京では人口一極集中が進み、地方では人口流出が進む。物流のみならず人や車の流れを変えることで、都市と地方の社会課題の解決に挑む。

 人口減少時代に突入した日本は、東京への人口一極集中が進み、地方では人口の流出が進むと予測されている。人から人に荷物を送ることが仕事の物流会社にとって人口動態への対応は、経営戦略の根幹をなす。

 佐川急便を中核子会社とする持ち株会社、SGホールディングス(京都市南区)の2015年3月期の売上高は8574億円、営業利益は455億円だった。対前年比でわずかに増収増益となった。

 企業間物流や、宅配などのデリバリー事業は売上高全体の83%、営業利益は86%を占める。ロジスティクス事業や海外事業なども手がけるが、第2の柱には至っていない。屋台骨を担うデリバリー事業の伸長なくして成長は難しい。

 デリバリー事業の収益拡大に向けて、佐川急便は人口が集中する都市部では収益拡大と環境負荷を削減するソリューションを提供している。一方、労働力の確保が難しい地方では、女性活用などで活路を見いだそうとしている。

過密が起こす負荷を削減

 4476万人、3927万人、3453万人──。これらは開業3周年を迎えた東京スカイツリーの2012年から2014年までの年間観光客数の推移だ。開業ブームが落ち着いた今でも日本の人口の約4分の1が訪れている計算になる。観光客の減少に悩む地方から見れば、羨む声が聞かれそうだが、都心で大規模な施設を運営する際に立ちはだかる壁がある。その1つが物流の集中による納品車両の渋滞や違法駐車、それによる環境負荷の増大だ。

 スカイツリーは、世界一高い電波塔や商業施設、オフィスビルなどからなる大型複合施設だ。商業施設には約320の店舗が入居、搬入される荷物は毎月約7万個、1日2000個以上と国内最大の規模を誇る。

 同施設を運営する東武タウンソラマチ(東京都墨田区)が、開業前にテナント入居予定店舗に調査したところ、毎日800台超の納品車が来ることが判明した。開店前などに納品車が集中すると、施設内の荷さばき場は混雑し、施設外の公道での渋滞も予想され困っていた。

 その解決に佐川急便が展開する館内物流が一役買った。館内物流は、狭義にはテナントに納品する荷物を集約して施設内で共同配送し、効率的に配送する仕組みを指す。ただし、同社が手がける館内物流はより広範にわたる。

 「物の流れのみならず、物流に関わる人や車両の情報も管理することで配達の効率化と環境負荷の低減を目指す」と、スカイツリーで館内物流を取り仕切る佐川急便東京営業所の荒木宏彦係長は説明する。

 主な取り組みは3つある。まずは納品物を外部倉庫に搬入してもらい、同社が一括配送することで納品車両を減らしたことだ。例えば、電波塔にある観光グッズを扱う店舗だけで約1000種類の商品を扱い、1日に訪れる納品車両は230台になると予想された。そこで講じた対策が、納品を同社の有明物流センターに集約し、スカイツリーには同社の4tトラックを1日3便運行することだった。その結果、230台分の車両を削減できた。

 次に直接納品する車両を登録制にして納品時間を調整することで駐車時間を短縮した。この他、直接テナント店舗に納品しない2000個以上の荷物を、約20人のスタッフが台車を使って館内に運んでいる。

■ 東京スカイツリーへの館内物流の導入で車両台数と環境負荷を削減