富岡 修(日経エコロジー)

ヤフーの資本参加を受けて始めたネット通販事業で成長を続ける。CO2ゼロへの挑戦でメーカーとの連携を深め、先行する大手に挑む。

■ アスクルの連結売上高の推移

 「ビッグデータや人工知能(AI)、ロボットなど最新技術の活用と革新的なビジネスモデルの構築によって、2030年にCO2排出量をゼロに減らすことに挑戦したい」と、アスクルの岩田彰一郎社長は訴える。

 アスクルといえば、文具などのオフィス用品を注文の翌日に届ける企業向け(BtoB)の通販事業のイメージが強い。しかし、今は2012年4月にヤフーと資本・業務提携し、同年10月に始めた個人向けネット通販事業「LOHACO(ロハコ)」への注目が集まっている。成長が続く同市場で先行する米アマゾン・ドット・コムや楽天などに伍する存在になれるのか。アスクルの挑戦をサプライヤーも注目している。ロハコ事業は順調に拡大しており、2016年5月期の売上高は328億円、今期は480億円を見込む。

サプライヤーや顧客にゼロ宣言

 アスクルは、7月に約200社のサプライヤーやBtoB事業の顧客などを招いて地球温暖化フォーラムを開催した。岩田社長はその場で企業が連携して温暖化対策に取り組もうと呼びかけ、冒頭の「自社が排出するCO2排出量を2030年にゼロにする」という決意を表明した。

 CO2の年間排出量はサプライチェーン全体で97万1000t(2015年5月末時点)。内訳は、商品や原材料に関わるCO2が93万t、サプライヤーの輸送に関わるCO2が1万8000t、事業所から出るCO2が1万3000t、配送に関わるCO2が1万tだ。アスクルは後の2つでCO2ゼロを目指す。

 なぜ、岩田社長はCO2ゼロを訴えたのか。それはCO2ゼロを目指すことが、アスクルの本業を強化することにつながるからだ。

 アスクルの主力事業は、BtoBの通販事業である。注文翌日に商品を届けるという配送の速さが多くの顧客に支持された。中間流通を省いた効率的なビジネスモデルは環境負荷も低く、現在も成長を続けている。一方、BtoC事業はアマゾンなどの後じんを拝しているが、ヤフーとの提携で巻き返しを図っている。

 アスクルの本業強化策は2つある。1つは物流効率の向上だ。具体的には、物流センターにおける配送商品の仕分けや梱包、それらを配送先まで素早く届けることだ。岩田社長が「物流を制するものがネット通販を制する」と言うように、物流は通販の根幹を担う。

 もう1つは商品開発力の向上だ。顧客が求める商品をビッグデータで分析し、その情報をサプライヤーに提供することで、他のネット通販では購入できない付加価値の高い独自商品を扱う。データから販売量を予測し売り切ることができれば、生産ロスや廃棄ロスを減らせ、収益も高まる。

 アスクルは事業拡大に伴い、配送の小口化や豊富な品ぞろえを実現するために配送網の拡大や物流拠点などを増やした結果、CO2排出量は増加傾向にある。同社はこれまでCO2削減に熱心に取り組んできたが、このままではCO2ゼロどころか排出量が増え続けかねない。さらなる対策の強化が必要だ。

■ アスクルの1年間のCO2排出量
※アスクルの資料から抜粋して作成。データは2015年5月末時点