「固形化」で物流コスト低減

 江津工場で生産するのが、食品や化粧品向けのCNFである。まず年間30t以上を生産する。CNFは一般に水と混ぜた状態で供給するが、ここではほぼCNFだけの固形物(粉体)を作れる。腐敗や細菌の増殖を抑えられるため、食品や化粧品の材料に適しているという。

 さらに、固形物にすることによって輸送コストを削減できる。水との混合物の場合、CNFは5%程度しか含まれず、ほとんど水を運んでいることになるからだ。同じ量のCNFを供給するには、固形物にして運んだ方が効率がいい。山崎副社長は、「固形化する技術を確立したことは、物流コストの削減にすごく効いてくる。CNFの競争で頭1つ抜けられる」と自信を見せる。

バイオマス発電市場を開拓

 CNFをはじめとする新素材の他に、成長分野として期待が大きいのがエネルギー事業である。売上高を現在の350億円から中長期的に500億円以上に引き上げる。営業利益でも全体の約5分の1をエネルギー事業で稼ぐ考えだ。

 エネルギー事業の拡大を担うのがバイオマス発電である。日本製紙はグループで合計180万kWの発電設備を持つ。国内外に約18万ヘクタールの社有林を保有しており、これまでに培った山林事業のノウハウや木材チップの生産技術などを生かし、バイオマス発電事業を推進する。

 既に2015年6月から、八代工場(熊本県八代市)で間伐材などの木質バイオマスを100%利用する出力(送電端)5000kWの発電設備が稼働中である。発電した電力は固定価格買い取り制度(FIT)に基づいて電力会社に売っている。

 この9月には、石巻工場でバイオマス発電設備の試運転を開始した。出力は13万5000kW。石炭に木質チップや木質ペレットを30%混ぜて燃焼、発電する。2018年3月に営業運転を開始する予定だ。今後、秋田工場(秋田市)で11万kW超の設備を稼働させる計画である。

 発電事業ともう1つ、バイオマス燃料の製造・販売を強化する。国内では原子力発電所の再稼働が見通せない中、石炭火力発電に依存する状態が続いている。温室効果ガス削減が強く求められており、バイオマス燃料の需要が拡大するとみる。

2018年3月に営業運転を開始する予定の石巻工場のバイオマス発電設備(左)。石炭と一緒に混ぜて使える新型のバイオマス固形燃料(右)

 現在、タイでバイオマス固形燃料を生産中だ。木質ペレットなどは石炭とは別の破砕設備が必要になるが、新型の燃料は石炭と一緒に同じ破砕装置に投入できるため既存の発電設備に導入しやすい。

 今後は、紙の需要減少を上回るスピードで次の事業の柱を育てることが課題になる。事業構造転換は、これからが正念場だ。

いきのいい人材投入し、顧客ニーズすくう
日本製紙副社長 山崎和文氏
写真/北山 宏一
 今までは紙・板紙事業が主力だったが、これからは既存事業を強化しつつ、それ以外の新規事業を発展させる。ただし、木材をベースにする点は変えない。当社は国内外に約18万ヘクタールの社有林を持っており、原料から製品まで一貫して生産できる強みを伸ばす。パリ協定など世界で温暖化対策が強化されており、再生可能な資源であるバイオマスに対する理解が進んでいるのも有利に働くだろう。
 新規事業の柱であるセルロースナノファイバー(CNF)は、これまでに1000社近くから引き合いが来ている。石巻工場、富士工場、江津工場でそれぞれ種類の異なるCNFを生産していることが、競争力になると考えている。コスト削減では用途開発が鍵になるからだ。当社は様々な用途に対応できるので、量産効果によってコストを削減しやすい。
 実証の段階からある程度の規模のプラントを造っているのも、コストを削減する上で重要だ。コスト削減には、工程数を減らしたり、生産性を上げたりする必要がある。だが、どう改善したらいいかは、実際にプラントを造って動かしてみないと分からない。岩国工場(山口県岩国市)での実証は、石巻工場での量産に役立った。
 顧客の要望に合わせてCNFをカスタマイズすることも重要だ。6月に新設した新素材営業本部には、若くていきのいい人材を集めている。ここが中心となってニーズを吸い上げ、需要を開拓していく。(談)