馬場 未希(日経エコロジー)

創業100周年を機に経営と環境の目標を連動させた。水リスクを抱える中国などで市場を拡大して、節水に貢献する。

 上海で6月に開催された水まわり設備の見本市「キッチン&バス チャイナ2015」。TOTOが節水便器「ネオレスト」に搭載している「トルネード洗浄」の解説に、現地の建築関係者らが人だかりをつくった。

■ 中国・インドで販売・製造を強化
上海で6月に開催された水まわり設備の見本市でのTOTOのブース(左)。便器の節水技術を説明する展示に、現地の建築士やデザイナーらが足を止めた(右)

 洗浄のための水量を絞りながら、便器ボウル内の水の流れを制御して汚れを確実に配水管へと排出し、下水まで運ぶ。その仕組みを、壁面に動画を投影する「プロジェクションマッピング」や、モックアップで重点的にアピールした。「技術と、節水という付加価値を結びつけて、分かりやすく説明した」と、TOTOのESG推進部環境商品推進グループの光田尚史企画主幹は振り返る。

左は大洗浄に要する水の量を抑えたウォシュレット一体型便器「ネオレスト ハイブリッドシリーズAH」。右は日本、中国、アジアをはじめ世界で販売している節水型の「エアインオーバーヘッドシャワー」

 1248億円の海外事業売り上げ(2014年度)の52%を稼ぐ中国では、節水などの独自技術が、付加価値として注目を集めている。中国経済が減速する中、2015年第1四半期も2014年同期比で約18%増収した。

技術を売りに高級路線で認知

 2014年にまとめた「TOTOグローバル環境ビジョン」において、高い節水機能を備える製品の普及により、水問題や地球温暖化の解決に貢献する方針を打ち出した。加えてこのビジョンは、環境目標の実現を目指すことで事業も成長させる、事業と環境を一体化させた内容になっている。

 同社の中国事業は、これを実践する一例といえる。北京など中国東北部は、世界でも特に水問題が深刻だ。地域の水資源量に対する使用量の多さを「水ストレス」と呼ぶ。これが広域にわたって世界で最も高いレベルに達している。節水機能は、水ストレスを抱える地域で売りになる。

 近年、高い経済成長率と都市部の人口増で住宅の新築需要が拡大してきた。TOTOはその中国で「高級ブランド」の地位を固めた。現地では多数の同業がしのぎを削るといわれる。価格競争に加わるより、付加価値をアピールして富裕層を狙う戦略が功を奏した。

 北京五輪のスタジアムなどの著名な建築物、主要都市のホテルなどへ上位製品を納入して知名度を上げ、使い心地を富裕層にアピールした。同時に現地における規制や水道配管の事情、消費者の好みなど、仕様からデザインまで現地への適応を徹底した。

 中国の新築住宅は内装や設備を顧客が選ぶのが一般的で、今では富裕層がTOTOを指名して買うようになった。「中国経済の状況を踏まえても、節水や省エネなどの高機能が魅力になり、高い需要を保っている。これからも富裕層市場で成長を続けそうだ」と、野村証券の福島大輔アナリストはみる。

 水ストレスの低い上海など中国南部では節水よりも他の技術が消費者の心に響く場合がある。汚れの防止に効く技術はその1つだ。

 2013年に中国と欧州、米州向けに発売した高額製品には、日本向けよりも先に、光触媒を使う新しい防汚技術を搭載した。1台140万円を超す価格設定にもかかわらず、中国ではホテルのスイートルームなど向けに販売実績を積んでいる。

 同社は中国で展開した販売戦略をアジアの新興国市場でも攻め手に使う。重要な新市場とみて同社が力を入れる国のうち、インドは中国以上に、全土で高い水ストレスを抱える。

インドに工場を設立、同国内の需要拡大に備える。前列の中央モニュメントの左は喜多村円社長

 インドへは2002年に進出後、ムンバイの高級ホテル「タージ・マハル・ホテル」などへと納入を広げた。2014年に開業したムンバイ国際空港第2ターミナルにも、高い節水機能と使いやすいデザインが決め手となり、節水便器を納入した。全土に販売網を広げ、今後さらに需要拡大が見込まれることから、同年、グジャラート州で国内と欧州・中東への供給拠点となる年産50万台規模の衛生陶器の工場を稼働させた。