省エネ策を世界へ横展開

 行動計画のもう1つの柱は、工場におけるCO2排出の最小化である。売上高当たりのCO2原単位を2012年比で2025年までに半分にする。そのために、効果の高い省エネ策を国内外の工場へ新設・既設を問わずに横展開する。モデルとなる省エネ工場の1つが、デンソー大安製作所(三重県いなべ市)だ。

 デンソーは2008年のリーマンショック以降、エネルギーを部品と捉え、必要な時に必要な分だけエネルギーを供給する「エネルギーJIT(ジャストインタイム)」と呼ぶ改善に着手した。この先行例といえる大安製作所では、休憩時間など生産が止まる時間に電気や熱の供給が自動で停止する生産ラインの「アイドルストップ」をいち早く導入。以来、次々と対策を導入している。

 例えば、金属部品の切削工程では、生産量にかかわらず大型設備を稼働させていた。これを生産量に応じて稼働を調整できる小型設備に替え、工程の電力消費を19%減らした。切削加工する部品の固定にも電気を多量に使っていたが、バネの原理を生かして電気を使わずに固定できる方法を考え、設備を更新した。

 工場内に小水力発電設備も設置した。切削工程で使う大量の廃液をリサイクルする際に同社製の車載発電機(オルタネーター)を使い、所内の高低差を生かして発電する。

老朽化した大型の切削設備を、生産量に応じて稼働を調整できる小型の設備に更新した(写真左)切削加工に使う廃液が、事業所内を流れるのを生かして発電する小水力発電設備(写真右)

 同製作所は、2015年度の省エネ大賞・経済産業大臣賞を受賞した。他にも多くの省エネ策を積み重ねている。「現場の従業員の、日頃からの省エネを考える取り組みから生まれる」と、大安製作所・走行安全製造部の水谷幸樹・走行安全1工場長は話す。

 「技術を製品として実現するのも、工場で生産時のCO2排出を抑えるように知恵を絞るのも人材の力」(棚橋部長)。デンソーの新ビジョンは、こうした人材を磨く推進力となる狙いも込められている。2020年の経営方針でも明示した環境配慮のクルマ社会を築くリーダー役を務められるかどうかは、新ビジョンの実践にかかっている。