吉岡 陽(日経エコロジー)

人口減少に直面する国内の住宅市場は、厳しい競争が続く。森林・緑化・環境のノウハウを結集し、緑の利活用のニーズを深掘りする。

 住友林業が、緑や環境に関連する困り事の“駆け込み寺”ともいえる組織を立ち上げた。2014年4月に、資源環境本部の中に設置した「森林・緑化研究センター」である。住友林業グループが持つ、森林・緑化・環境に関する技術やノウハウを集約し、顧客の課題解決につながるサービスをワンストップで提供する。

■ グループの知見を集約
森林・緑化研究センターが、グループ内に散らばっている環境技術やノウハウを集約し、顧客の課題解決にあたる

 社員6人の小所帯だが、樹木、緑化、バイオマス発電、植林、生物多様性など各分野の専門家で、広い人脈を持つ精鋭を各部門から集めた。

 住友林業の2015年3月期の連結売上高は9972億円。その4割強を占める国内の住宅事業は、人口減少によって縮みゆく市場の中で厳しい競争にさらされており、大きな拡大を見込むのは難しい。

 その一方で、環境意識の高まりとともに、様々な分野で「緑」の利活用のニーズが高まっている。都市の緑化によるヒートアイランド対策、バイオ技術を駆使した環境浄化や苗木の生産、生物多様性に配慮した森林保全や未利用材を活用したバイオマス発電などだ。

 住友林業は、こうした「緑」に関連する事業を成長分野と位置付け、市場開拓を進めてきた。事業を通じて社会課題の解決を目指す「CSR経営」の理念を掲げてきた同社にとっては、単なる事業拡大以上の意味を持つ。ところが、こうした事業を本気で深めようとしたとき、ある経営体制の課題が浮かび上がってきた。組織の縦割りの弊害だ。

縦割りから脱却

 森林・緑化研究センター長の中村健太郎氏は、「ニーズは多様化し、専門化している。最近増えているお寺や神社からの相談では、年老いた名木を再生し荒れた裏山も参拝者が回遊できる空間に変えたい、美しいだけでなく周辺の生態系とも調和する植栽を整備したいといった、難度の高い複合的な課題に対応しなければならない」と話す。

 ところが事業領域を広げるにつれて、部署やグループ企業の裾野が広がり、組織が細分化されていった。そして各事業が専門化・高度化するにつれて、グループ内のどこにどのような技術やノウハウがあるか見えづらくなっていた。

 複雑で多様な社会課題と向き合いCSV(共有価値の創造)によって会社を成長させるには、事業部門の壁を越えて顧客が必要とするサービスを提供するコーディネーターの存在が不可欠だった。売り上げは、実際に手を動かす部署に入る。森林・緑化研究センターは、グループに横串を刺し、縦割りによる機会損失を減らすことで、収益に貢献する。