独自の本格HVも発売へ

 スズキの環境戦略は、「小さく生んで大きく育てる」という言葉に象徴される。

 その典型例がハイブリッドシステムだ。最大手のトヨタは1997年に本格的なハイブリッドシステムを導入し、その後高度化とコストダウンを図った。最も難しい技術にチャレンジし、それを量産することでコストダウンを図るイメージだ。

 スズキはその逆で、技術の階段の下から1歩ずつ上がっていく。四輪商品企画部長の藤𥔎雅之氏は、「顧客は小さいクルマに対して手頃な価格と、燃費を求めている。その要求に応えるために重要な軽量化や燃費について、10年くらい先を見て戦略を立ててきた」と振り返る。

■ スズキの電動化アプローチ

 上の図を見ていただきたい。同社は2010年に一時停車などの際に、エンジンを自動停止させる「アイドリングストップ」搭載車を発売した。

 2012年には簡易なバッテリー充電システムを導入した。減速時の回生エネルギーを蓄電し、エアコンやオーディオなどの電源にするシステムで、従来車に比べて燃費が1~2割改善する。同社は「エネチャージ」と呼ぶこのシステムを2012年から搭載し始め、今や新型車の大半に搭載している。

■ スズキは2015年8月にハイブリッド車「ソリオ」を発売した

 2015年にはエネチャージを発展させ、簡易型のハイブリッドシステムに仕上げ、新型ソリオに搭載した。まず蓄電システムの高効率化によってエネルギーの回生量を増やした。蓄電した電気でモーターを駆動させ、エンジンを支援することで燃費や加速の向上を図るという技術だ。

 さらにスズキは東京モーターショーでモーターだけで走行可能な本格的なハイブリッドシステムを発表した。近いうちに同システムを搭載した新型車を発売する見通しだ。

東京モーターショーでスズキの鈴木俊宏社長は環境技術をアピールした

 VWがなかなか技術供与に応じなかったディーゼルエンジンについても自前で開発した。排気量は約800ccで2気筒だ。騒音や振動の課題に対しては吸音材などで対応し、排ガスについては排ガスの一部をエンジンに戻す再循環装置(EGR)などで規制値以下に浄化している。

 2015年からインド向けに自社開発のディーゼルエンジンの搭載車を発売した。開発担当者は、「気筒数を増やしていくことはできると思う」と話し、より幅広いディーゼルエンジンを開発する可能性を示した。

 そして、最もスズキらしいエコ戦略といえるのが軽量化だ。

 同社はクルマの基礎となるプラットフォームを根本から見直した。まずプラットフォームを軽自動車、Aセグメント、Bセグメントとサイズごとに統合した。藤𥔎部長は、「軽量化は使う材料が少ないからコスト削減につながる」と言う。同社はアルミなどへの素材の代替ではなく、鉄を徹底的に使い、軽量化をコスト面からも捉えている。

 まず全体として角ばった部位を滑らかにした。滑らかな形状にすることで負荷を分散させ、重さのある補強材を省いた。プラットフォームを下から見た場合、従来は骨格部が直角に交わる部位があり、そこに補強材が必要だった。今回は骨格部を滑らかにして接合部をなくし、補強材を省いた。

 こうした取り組みで車両全体で最大15%の軽量化を実現した。例えば新型アルトの重量は610kgで従来モデルより60kg軽くし、37km/ℓの燃費に貢献した。他社が電動化に伴い車両重量が増える傾向にあるなかで、これだけの軽量化を実現したインパクトは大きい。スズキはこれらの技術を進化させることで、「40km/ℓの燃費を目指している」(本田治副社長)。

■ 主要モデルの燃費

 将来的にスズキが強い地域でもZEV規制など苛烈な環境規制が広く導入されることになれば、同社は窮地に陥りかねない。

EV市場の拡大期が正念場

 2014年のスズキの世界販売は287万台で業界10位だ。PHV(プラグインハイブリッド車)やFCV(燃料電池車)が主戦場になった時には巨額の研究開発投資が必要で、単独で開発するのは難しい。

■ 自動車各社の世界販売台数(2014年)
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 ただ、これらのエコカーは長距離移動を前提としており、高級車や大型車での採用が中心となりそうだ。小型車を主力とするスズキは、EV市場での戦い方がポイントになる。モーターで駆動するEVはエンジン車に比べて構造がシンプルで、コスト競争力のある新興国のメーカーの参入障壁が低い。実際、中国では短距離のみを走る簡易なEVが開発されている。

 こうした勢力に対して、スズキはどのように対抗するのか。まだその解を見せていない。EV市場の拡大期が、同社のエコ戦略の正念場になりそうだ。