橋本 誠一 氏(写真:中島 正之)

 地球温暖化による気候変動の問題は、既に事業リスクとして顕在化している。2016年初めには、「午後の紅茶」の茶葉の生産地であるスリランカが集中豪雨の影響で大きな被害を受けた。一方、グループの事業会社があるオーストラリアは水不足の問題が深刻だ。

 2050年を目標にグループの長期環境ビジョンを示してきたが、こうした状況に対応するため2017年の早い時期に2030年をターゲットにした中期目標を公表する。SBT(科学に整合した削減目標)に準拠する形で温室効果ガスの削減などへのコミットメントをする。2017年は、オーストラリアやブラジルなど海外の事業会社とともに、この目標に対して具体的に取り組む年になる。 

 キリンのCSVは、社会にとっての価値をお客様の価値として実現していくことだ。2013年にCSVを掲げて社内に組織を作ったが、2016年はグループ全体でCSVの取り組みを進めた年になった。「健康」「地域コミュニティー」「環境」の3つをキーワードにして重点的に取り組んできた。

 特に地域コミュニティーへの貢献では、5月から「47都道府県の一番搾り」を発売した。都道府県ごとに味の違いや個性を楽しめる地域限定のビールを出して好評だった。決して効率の良い販売方法ではないが、地域の方々とともに、地域の誇りを共有しながら作ることができたのが良かったと考えている。

遠野産ビールで地域を活性化

 地域社会との関わりという点では、岩手県遠野産のホップを使って醸造したビールを東京・代官山のクラフトビールが楽しめる店で販売した。高齢化などの影響で遠野市のホップ生産農家は30件程度に減っており、こうした活動を通して地域の活性化につなげたい。2017年は地域社会への貢献をビールの主力事業にどのようにして結び付けていくか、チャレンジする年になる。

 健康増進という点では、糖質やカロリーオフ、プリン体をカットしたビールの売り上げが伸びている。健康へのニーズを捉え直して、健康増進につながる新しい商品を開発していきたい。

 お客様の社会的課題への関心は確実に高まっている。2017年も「健康」「地域コミュニティー」「環境」の領域で継続性を持ってCSVを推進する。