橋本 誠一 氏(写真:中島 正之)

 キリンはCSV(共通価値の創造)を実践するため、商品を通じた「人や社会の絆づくり」と「お客様の健康増進」を追求している。2015年はこの2つに環境活動を統合した。

 人や社会との絆づくりでは日本の地域経済を活性化するために国産原料による商品づくりに注力している。キリンビールは2016年春から「47都道府県の一番搾り」を銘打ったビールを売り出すべく、各都道府県の住民の方、地元の学識者や料理や歴史などに詳しい方などと協力している。

 文化や歴史などの「地元の誇り」をビールで表現し、その地域内で販売する。決して効率的な商品開発や販売の手法ではない。しかし、地元の方が誇りを持って応援したくなるビールを作り、我々も地元の誇りを我が事として共有して売り出す考えである。

 環境については2013年に長期の環境方針を取り決め、2050年を目標にバリューチェーンを視野に入れて取り組んでいる。CSV活動と統合したことから、環境活動でも価値創造の視点で考える必要がある。

商品に社会的価値を織り込む

 お客様にとっての価値と、社会的価値は切り離されたものではない。持続可能な地球を子孫に残すという社会的価値を追求するものづくりは、キリンの商品を求めるお客様のニーズにも合致する。商品に社会的価値の創出をどう織り込むかが、これからの課題である。

 例えば軽量のビール中びんの採用を進める。日々、商品の社会的価値を高めることに取り組んでおり、多くの商品で少しでも容器の軽量化を図ることもその一環だ。

 グループ会社のメルシャンのワイン向けブドウを栽培する長野県上田市の椀子(まりこ)ヴィンヤードの畑では本格的な生態系調査を始めた。休耕地だった畑を借り上げ、地元の農家の方などの協力を得て、10年近くをかけて育てたブドウ畑だ。レッドデータブックに掲載されているウスバシロチョウの生息を確認し、キバネツノトンボも見つかった。地元の農業を支えることが、生物多様性や里山の自然を守ることにもつながる。つながりを認識しながら価値を生むことは、CSVそのものともいえる。

 客が求める価値を、社会の価値創造とつなげて提供することが、企業の価値も向上させる。特に環境や健康、地域の問題とのつながりに焦点を当てて取り組んでいきたい。