小路 明善 氏(写真:鈴木 愛子)

 ESGやCSVに取り組む方針は2つある。1つは、事業活動と社会課題の解決を経営の両輪として進めていくことだ。社会のニーズを本業に取り込みながら、継続的に取り組んでいかなければならないという思いを強くしている。企業の財務的な価値と、ESGやCSVの実行による社会的な価値をともに向上させることによって、より良い取り組みの循環が長期的に生まれてくる。

 さらに、グループの経営資源を生かした取り組みが重要だと考えている。社会に提供できる価値は何かを深堀りしていけば、食品事業で健康に貢献するなど、我々ができることはたくさんあるだろう。

 グリーン電力の利用を2009年に食品業界で初めてスタートさせた。スーパードライ350mℓ缶とギフトセットのビール類をすべてグリーン電力で製造している。お客さまに購入していただけば、地球温暖化の防止に間接的に貢献できる仕組みだ。今でも継続しており、累計の販売本数は100億本を超えた。

 こうした取り組みの根底には、我々の事業は自然の恵みによって成り立っており、その恵みに感謝し、明日につなげていかなければならないという考えがある。スタートした当時、グリーン電力を利用する例は多くなかったので注目を集め、企業や商品としてのブランド価値を高められた。製造コストが多少上がっても、決して高くはない。

競争だけでなく協調も

 ビール製造の副産物であるビール酵母細胞壁を原料にした農業資材の販売に力を入れている。農薬の使用削減につながり、持続可能な農業の確立の一助になる。農作物の免疫力強化につながることが実証できた。2017年3月、アサヒバイオサイクルを立ち上げた。事業として取り組み、活動の継続と拡大を図っていく。将来的には国内だけでなく、アジアなど稲作が盛んな地域にも普及させ、持続可能な農業に貢献したい。

 2017年はビール4社で共同物流を開始した。これによってCO2の排出量を年間3000t近く減らせる。単独で取り組むより、サプライヤーや同業との共同の取り組みの方が効果は大きい。物流部門は競争領域だったが、もはや協調の領域だ。