斎藤 正一(日経BP環境経営フォーラム事務局長)

半導体事業本部出身、クロサイの保護活動への参加が転機になった。SDGsの実現にICTを使ってどのような貢献ができるかを探る。

前沢 夕夏(まえざわ・ゆか)
1966年東京都出まれ、89年富士通に入社。半導体事業本部で製造プロセスシステムの開発を経て、2002年より環境本部に在籍、環境経営情報システムの構築、環境コミュニケーションなどに従事、2016年から現職

 大学時代、つくば科学万博で見た富士通パビリオンの3D(立体)映像に魅せられ就職を決めた。システムエンジニア希望で入社し、半導体事業本部のシステム部門の配属になる。13年間在籍した半導体事業本部では、半導体の前工程であるウエハープロセスの工程管理システムの開発などを担当した。

 半導体事業は国内外で製造ラインを増やしていた時期だった。システム開発だけでなく、国内工場の投資に関するマネジメントや海外の委託先との契約、従業員教育など幅広く携わったことが、今の仕事にも生かされているという。

 小学校に入学する前から、なぜかサイが好きだったそうだ。転機になったのは、1997年から2004年まで、毎年、アフリカ各地で絶滅危惧種であるクロサイの保護活動に参加したことだ。サイの角は高値で売れるため密猟の対象になり、70年代の6万5000頭から90年代初頭には2000頭まで激減していた。欧米の研究者と行動を共にしたが、現地で見たのは保護活動を助けるレンジャーの中にも、密猟者と裏でつながる者がいるという複雑な現実だった。「背景には経済格差や貧困があった。環境問題の根本にある問題を考えさせられた」と話す。

 富士通では環境本部が2000年に発足、自ら志願して2002年に異動した。初めの3~4年は環境経営情報システムやISO14001をマネジメントするシステムの構築に汗を流した。その後、環境報告書の作成や生物多様性の保全に関わる社会貢献活動、社員が小中学校で教える環境出前授業のマネジメントなどに携わった。

 前沢さんが所属するグリーン戦略統括部は、環境ビジョンや環境行動計画の策定などグループ全体の戦略を考える部署だ。2016年4月、統括部長に就任してからは、第一線の従業員に対してSDGs(持続可能な開発目標)やパリ協定で示された方向性を伝え、新しい事業の切り口を見つけてもらうための研修活動に力を入れる。「環境本部は社会の動きをいち早く捉えてグループ全体を導くコンダクターの役割を担っている。今後は、こうした機能を強化したい」と語る。

 現在の悩みは、企業の環境経営は高度化しているものの、絶滅危惧種を含めた地球環境の問題が一向に解決していないことだ。この悩みの解決策をSDGsに見いだしているようだ。

 「SDGsには、実現すれば世の中が良くなる目標が並んでいる。この目標を叶えるために富士通のICT(情報通信技術)を使ってどのような貢献ができるかを考えていきたい」との言葉が印象に残った。アフリカで環境問題の背後に潜む問題を考えた経験が、きっと何かの形で役立つだろう。