斎藤 正一(日経BP環境経営フォーラム事務局長)

ロジスティックス部に配属されサプライチェーン管理を学ぶ。この手法をCO2削減にも生かし、成果を上げている。

阪口 宗(さかぐち・むねと)
1960年生まれ、大阪府出身。86年三重大学大学院農学研究科農芸化学専攻修了、同年味の素ゼネラルフーヅ入社、研究所などを経て2000年、ロジスティックス部課長、2002年、外注生産部長、2008年4月から現職

 大学院で農芸化学を専攻し、味の素ゼネラルフーヅ(AGF)に研究職として入社した。最初にアイスクリームの製品開発に携わり販売までこぎつけたが、売り上げが伸びず市場導入から5年で撤退に追い込まれた。若い時には、そんな苦い経験もした。

 30歳でマーケティング事業部に配属となり、研究所を離れた。ビジネスマンとしての転機は、ロジスティックス部に異動した34歳の時、上司となった川島孝夫部長との出会いだ。1994年当時、米国からロジスティックスという経営手法が伝わり、サプライチェーン全体を見る専門の部署が作られた。部長のかばん持ちをしながら、自社だけでなくサプライチェーン全体を管理する手法を学んだ。この他にも「スピードを重視する」「その時々のベストを選ぶ」など仕事に対する心構えを教えられたと言う。

 2008年に品質保証・環境部長に就任してからは、この時の経験が生きている。CO2削減では、サプライチェーン全体で削減するとの考えを社内の各部署に徹底して成果を上げている。具体的な数値目標を掲げて取り組みを促した結果、2016年度末までの3カ年で7%削減(CO2原単位、2013年度比)する目標を初年度で達成した。

 社員や顧客とのコミュニケーションにも力を入れる。グループの生産拠点であるAGF鈴鹿は、鈴鹿川から伏流水を取水する。2014年9月から始めた「ブレンディの森」づくりと名付けた活動は、鈴鹿川の源流にあたる森林の整備を工場の従業員が中心になって進めるものだ。この取り組みで従業員の環境に対するモチベーションは着実に上がっている。

 2015年3月からは、コーヒー袋やペットボトルなどに「植物性プラでエコ」「省包材でエコ」などと記した7つの「『ほっとする』エコマーク」を95品種(昨年8月末時点)に印刷している。ホームページには、記載した理由と基準を明示する。阪口さんは、「同業他社よりも取り組みが進んでいるものだけを選んで記した。消費者の皆さんに『いいね』と思っていただく環境の取り組みを広げたい」と話す。食品メーカーは、環境への取り組みが進んだ企業が多い。そのなかで社内外のコミュニケーションを強化しAGFの存在感を高めたいと考えているのだろう。

 座右の銘は、「敬天愛人」。「真理を究明して正しい行いをする。その時に人を愛する視点を持つ」との意味で、20年前、西郷隆盛に関連した書籍を読み、共感したそうだ。昨年4月、AGFは味の素の完全子会社になり、海外での事業展開ができるようになった。「現在と次の世代の従業員が、良い会社だと思えるような取り組みをしていきたい」と話す視線の先は、国内だけでなく海外の従業員にも向けられているように思えた。