廃棄物から生まれた環境建材

――染色の排水処理工程から出る廃棄物を有効利用している点もエコ製品として評価されています。

中山 当社は1999年に業界でいち早く環境宣言をしました。しかし、なかなか環境がビジネスにつながりませんでした。10年かけて開発したのがグリーンビズです。染色工程から出る排水は微生物で処理しますが、その過程で余剰微生物を含む汚泥(余剰バイオマスケイク)が多く発生します。焼却するか埋め立てるしかなかった産業廃棄物を何とか使えないかと開発に着手しました。

 地元の九谷焼をヒントにして、どろどろの汚泥を焼き固められないか。そんな発想からスタートして、いろいろな方法を試しながら、珪藻土と粘土を混ぜて約1000℃で焼き固める現在の方法に行き着いたのです。焼成できれば、あとは緑化の基盤として使うために植物はどのように根を生やすのかを検討するといった応用問題でした。

――開発スタッフは何人ですか。

中山 社員と社外の協力者を含めたチームは20人ぐらいになるでしょうか。

――そのチームでタイルへの展開などを進めているのですね。社外といえば、昨年10月に大和リースとグリーンビズを中心とした環境共生事業で提携しました。

中山 我々の技術を普及させるためにぜひ力を貸してほしいと打診して、包括提携しました。開発した技術を世の中に提案しながら、専門家の方たちに使ってもらうよう働きかける時期にきていると思っています。環境を相手にする事業は小松精練1社でやれるものではありません。自社でできる範囲は限られているので、同じ志を持つ企業とチームを組むことが必要です。そうでないと、せっかく地球温暖化防止に貢献できる製品なのにスピード感をもって普及させられません。

 トイレの壁にグリーンビズを使うと吸音効果があり、室内がとても静かになります。実は、トイレに使うのは、大和リースさんのアイデアです。マーケットを知っているからこそ出てくる発想でしょう。

期間損益よりも技術の「根」

――小松精練の売上高は366億円(2015年3月期)です。失礼な言い方かもしれませんが、企業規模はそれほど大きくないのに炭素繊維やセラミックス基盤などの新分野に事業展開できるのはどうしてですか。

中山 利益や売り上げを伸ばすことはもちろん大事ですが、事業拡大ばかりを重視するのではなく、いざという時に開発投資やM&A(合併・買収)を行うために、資金に余裕を持ちながら経営することが当社の方針です。しっかりした将来展望があれば、業績の踊り場があってもいいと思っています。私が入社した50年前の売上高は70億円ほどでした。そこからここまで来る間には、何度か踊り場を経験しています。

――期間損益にはそれほどこだわらず、長期的展望を基に先行投資するのですね。

中山 株主にしっかり配当し、社員に妥当な賞与を支払うことは前提ですが、次の投資をどこに向けるかを考えて実行することはとても重要です。本当はもっと資金や人材を振り向けたいと思うのですが、身の丈に合わせながら進めています。

 5年後、10年後を展望するといっても、例えば現在の為替や株、原油価格の情勢を事前に予測できた人はいないと思います。大事なのは、変化に耐えられる体質をつくっておくことです。「不易流行」と表現すればいいでしょうか。技術の「根」をしっかり保ちながら、新しい製品の開発に取り組んでいます。今は「繊維の技術で環境と共生する」というテーマがあります。5年や10年かかっても、課題を解決するという志を持って挑めば、道は必ず開けると思って進んでいます。

 染色産業、染色技術は世の中に絶対に必要なものです。しかし、今後も発展を続けるには染色排水の問題をどうするのかといった課題が出てきます。その時のために、先駆者として取り組みたいと考えてグリーンビズを開発しました。炭素繊維への展開にしても、自社の建物でまず使ってみて、技術の可能性を世の中に問いたいと思い、ファーボを開設しました。天井や壁にふんだんに布を使い、たくさんの斬新な知恵が詰まっています。ここから新しい技術が生まれてくれれば最高です。

――ファーボの総工費は15億円です。建て替えた方が安かったのではないですか。

中山 そうかもしれません。しかし、建て替えでは建物を長く使うという目的に合いません。

高校生の時の原体験で環境を意識

――環境問題を強く意識するようになったのには、高校生の時にかつての小松精練が排出していた色の付いた排水を見た原体験があるそうですね。

中山 確かにそれが原体験でしょうね。今でもしっかり覚えていますから。その私が経営者になって、汚泥の減容化やグリーンビズの開発に取り組んでいるのは、運命なのかもしれません。

――CO2削減のために、コストの安いC重油ではなくLNG(液化天然ガス)を使う方針も変わりませんか。

中山 環境対策に後退はあり得ないと思います。

写真/山岸 政仁