聞き手/田中 太郎(日経エコロジー編集長)

逆オイルショックは収拾し、2017年後半から原油価格は上昇傾向と予測する。途上国の成長を考えると、化石エネルギーへのダイベストメントの議論は行き過ぎだと主張する。

豊田 正和(とよだ・まさかず)
1949年東京生まれ。73年東京大学法学部卒業、79年プリンストン大学行政大学院修士。73年通商産業省(現経済産業省)入省。商務情報政策局長、通商政策局長、経済産業審議官などを経て2010年から現職
写真/鈴木 愛子

――原油価格の動向をどう見ていますか。

豊田 正和氏(以下、敬称略) 原油価格を長期的に見ると、2回目の大きな下落が生じているといえます。1980年代に起こった前回の価格下落は、回復に15年かかっていますが、おそらく今回はそれほどかからないと考えています。

 何が違うのかというと、前回は価格を維持しようとしてサウジアラビアなどの産油国が大幅減産をして長引かせてしまいました。その結果、価格が高騰している間に石油輸出国機構(OPEC)以外の高コストの新規生産者(非OPEC原油)の参入が増えました。価格維持が困難と認識された後は、シェア維持のために価格競争のような状態に陥ってしまいました。しかし、今回は傷を深くする減産をしていません。

 2016年1月に(原油価格の国際指標である)WTIの先物価格が1バレル当たり26ドルまで下がりましたが、そのようなことはおそらくもうないでしょう。実際の需給からくる価格というよりも投機マネーが逃げた影響が大きく、過剰な低下となりました。その後、主要産油国が不完全ながら増産凍結に合意し、価格安定化に向けた一定のメッセージを市場に送ったため、過度な低下は収まっていると思います。

 現在、供給過剰は1日当たり100万~150万バレルぐらいしかなく、それほど大きな水準でありません。世界の需給から見ると、原油価格が100ドルまでいくのは高過ぎだし、20ドル台まで落ちてしまうのも行き過ぎだと見ています。価格は2017年の後半から徐々に上昇しいていくのではないでしょうか。

――どのような理由からですか。

豊田 中国経済が減速しているとはいうものの、1日当たりの消費量は毎年100万バレル強ずつ増えてきています。ASEAN(東南アジア諸国連合)やインドを含めて輸送部門を中心に需要は安定して伸びていくと思います。現在の供給過剰が150万バレル程度だとすると、2017年中ごろには供給過剰は解消していきます。ただ、価格が上がると当面は何が起こるかというと、米国のシェールオイルの生産が増え、経済制裁が解かれたイランも増産するかもしれない。そういった不確定要素があるので、需給がバランスするにはもう少し時間がかかると思いますが、需給ベースで考えると5年後には70ドルを超えていくのではないでしょうか。

――もっと長期で考えると、自動車の燃費改善やエコカーの普及などで経済成長とエネルギー消費が連動しなくなるデカップリングが進むのではないですか。

豊田 先進国はそうでしょうね。経済成長率はそう高くないですし、効率向上により一次エネルギーの消費は減るという構造になってきています。しかし、途上国はそうではありません。特に中国、インド、ASEANの3地域を中心に相対的に高い経済成長をしていくので、世界全体としては消費は伸びていくのではないでしょうか。

――途上国は先進国の技術を利用して、より速いスピードでデカップリングが進むのではありませんか。

豊田 傾向としてはそうだと思います。ただ、デカップリングが進むよりも経済成長の方が大きいと考えた方がよいのだと思います。

■ 原油価格の動向(WTI先物価格、月次)
出所:U.S. Energy Information Administration(EIA)