斎藤 正一(日経BP環境経営フォーラム事務局長)

デュポンとの合弁会社で繊維のブランドマネジャーとして活躍。CSRと経営戦略は、経営理念の実現を支える車の両輪と捉える。

酒井 恵子(さかい・けいこ)
1964年沖縄県出まれ、86年国際基督教大学教養学部卒、同年東レ入社、国際2部、製品部を経て、2001年東レ・デュポン ライクラ営業部、2006年経営企画室CSRグループ、2013年から現職

 高校までインターナショナルスクールに通い、英語で授業を受けた。同級生の国籍は45カ国に及び、多様な価値観のなかで育つ。国際色の強い大学に進学したため卒論も英語で書いた。

 東レを選んだのは、「日本の会社がどんな価値観を持っているか」を知りたかったからだ。3年間働いて辞めるつもりが、「会社が受け入れてくれたので2016年で入社30年になる」と笑顔を見せた。入社後は、超極細繊維(マイクロファイバー)を使った眼鏡拭きなどの製品を各国に輸出する仕事を皮切りに、衣料品の企画営業、合弁会社でのマーケティング担当など様々な職場を体験した。

 若い頃から新商品などを担当することが多く上司も頻繁に代わったため、自然と自分で判断する習慣が身に付いた。はっきりとモノを言う性格で2001年に合弁会社である東レ・デュポンに出向した時は、デュポンから難題を言われても「NO」と言える人材と見込まれ白羽の矢が立ったそうだ。

 しかし、ここでライクラというポリウレタン繊維のマーケティングを担当したことが酒井さんの自信につながった。ライクラのブランドマネジャーとして、テレビCMの企画や百貨店でのキャンペーンなどに力を注ぎ、ブランド価値の向上に貢献した。この活躍が認められ、合弁会社からリーダーシップを評価する賞を受けた。

 2006年に現在の部署に異動し、CSR専任組織の立ち上げに関わった。初仕事はCSRレポートの改革。それまで各部署が手分けをして書いていたかたちを改め、レポート作りを社内のCSR活動を活性化させるツールにした。「今年は紹介できないが、来年は紙面に載せましょう」と各部署にCSR活動を促すわけだ。

 酒井さんがこだわるのは、「CSRと経営戦略を、経営理念の実現を支える車の両輪と捉える」ことだ。東レは企業理念に「新しい価値の創造を通じて社会に貢献」をうたっており、もともとCSRを事業とリンクして考えている。

 そこで2011年から、3年間の中期経営計画とCSRロードマップの目標年度を一致させた。「企業統治と経営の透明性」「事業を通じた社会的課題解決への貢献」など東レが定めた10のCSRガイドラインに実効性を持たせるため、それぞれにKPI(重要達成指標)を定め、各年度の目標値と実績値をCSRレポートで開示するようにした。

 かつての部下は、「CSRを商品だと思って社内に売り込もう」と話していた酒井さんを覚えている。他部署からの協力を得たのはもちろんだが、その努力が実り、東レのCSRは経営理念の実現のために力強く歩み出している。