村の自立をサポートする

――森林を守るには地域住民の理解も必要だと思います。その点ではどのような取り組みをしていますか。

タン 住民のみなさんの生計改善が大きなテーマです。途上国における違法伐採の根本的な原因は貧困にあるといわれますが、インドネシアの森林での違法伐採や焼き畑も、住民が生計手段を他に確保できれば減らすことができます。

 そこでAPPは、森林地域で暮らす住民に代替の生計手段を提供し、地域コミュニティの自立と活性化をサポートするため、2015年に総合森林農業システム(IFFS)を立ち上げました。サプライチェーン周辺の500の村落を対象とし、2020年までの5年間にわたり年間1000万ドルの資金供与をコミットしています。

女性グループによる野菜の栽培は新しい収入源として家計を助けている

 村落は当然ながら規模や環境が多様なので、この資金をベースに、それぞれの特質に応じた様々な生計改善プログラムを提供します。牧畜や魚の養殖、野菜・果物栽培の技術指導を行うケースもあれば、伝統工芸品づくりの推進や、肥料販売のマーケティング支援をしているケースもあります。

 資金や技術の支援に限らず、工場近くの住民向けに学校を設立するなど、地域全体の福祉改善も目指しています。小学校といった通常の学校だけでなく、専門的な技術を学べるテクニカルスクールを設置した地域もあります。

 目標の500村落のうち、2018年3月時点で191の村落で実施され、1万3000世帯に恩恵をもたらしています。この取り組みは、冒頭のEcoVadis社調査でも評価されました。ただし数が500と多く、現地では村長など管理者との交渉も必要ですので、地道に話し合いながら一歩一歩進めています。そして改善の成果を上げていけば、周囲にサポーターが増えて、森林地域の村の自立がもっと進んでいくと信じています。

――森林保護に端を発しているという意味ではESGのEのイメージが強いのですが、地域コミュニティ活性化に力を入れている点ではSの要素も大きいのですね。

タン 地域コミュニティが活性化すると違法伐採防止や森林火災予防につながり、環境保全に効果があることが分かってきています。つまりSに注力することは、APPにとってビジネス上の強みにもなるということです。

 Sにおいては女性活躍推進が重要なテーマだと考えます。実は、すでに総合森林農業システムのプログラムを実施している191の村落の中には、女性だけで小さい会社組織を設立したところも出てきています。

 2018年3月時点で、竹細工、織物といった伝統工芸やショウガ栽培など、女性だけで構成された25の団体が生まれ、APPも積極的に支援しています。これは、SDGsの目標1「貧困をなくそう」に加えて、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」にもつながる取り組みだといえます。

伝統工芸、織物製作のためなどに25のグループが活動中。SDGs5「ジェンダー平等」に貢献
APPの支援を受けたスマトラ、ジャンビー州の女性による赤ショウガ栽培

――最後に、SDGsの目標を今後達成していくため、企業トップとしてのコミットメントを聞かせてください。

タン SDGsの目標は本当に幅広いのですが、先ほども申し上げたように、多くの項目は「持続可能性ロードマップ ビジョン 2020」に合致しています。このビジョンを実施することで、SDGsの目標を一つひとつ実現していくため、強い決心を持ってコミットしていきます。