聞き手/田中 太郎(日経エコロジー編集長)

企業のグローバル展開が進み、外国公務員への贈賄などの腐敗リスクが大きくなっている。数百億円もの罰金・制裁金を科されることもあり、トップ自らリスクへの備えを築く必要がある。

髙 巖(たか・いわお)氏
1956年大分県生まれ。95年3月早稲田大学より商学博士号取得。専門は企業倫理。ISO・SR国内対応委員会委員や外国公務員贈賄の防止に関する研究会委員など数多くの公的委員を務めてきた。著書に『「誠実さ」を貫く経営』『コンプライアンスの知識』など
写真/佐藤 久

――企業活力研究所の「企業のグローバル展開とCSR」に関する研究会の座長を務めました。

髙 巖氏(以下、敬称略) この研究会は、企業のCSR担当者が集まって議論する場です。私は調整役として参加者のみなさんの悩みを聞きながら、今後どのような方向に進むのかについて議論をまとめました。参加企業は、電機や自動車などの大手企業で、事業のグローバル化がとても進んでいます。売り上げや利益、従業員の比率は明らかに海外の割合が大きくなっているため、海外拠点や海外のサプライチェーンでのCSRマネジメントをどうするのかが大きなテーマになっています。CSRの国際規格ISO26000を検討し始めた2000年ごろと比べると様変わりです。


海外拠点でのCSRマネジメントが焦点

――今年5月に開いた調査研究報告書の発表会では、「経営(トップ)の強力なリーダーシップを発揮すること(経営戦略との統合)」など9つの提言を打ち出しました。

 私が発表会で強調したのはトップの強力なリーダーシップです。ありきたりですが、言わないわけにはいかないポイントです。トップが腰を上げなければうまくいかないというのは、企業の担当者の本音でもあります。

――海外拠点のCSRマネジメントには、どの企業も苦労しているのですか。

 CSRに関する現地企業の体制が不十分で、本社からの支援が必要な場合があります。人材が不足しているという問題もあります。

 また、すべてとは言いませんが、欧米系の企業は取引先に対し「こうしてほしい」「これに回答しなさい」と要求を突き付け、自分たちはサプライチェーンのマネジメントをしっかりやっていると説明できる形に持っていきます。しかし、日本企業のメンタリティではそこまでできず、むしろ対話をしながらキャパシティ・ビルディング(能力向上)を進め、取引先の成長を待つというアプローチをしていることが今回の調査で分かりました。

 ただ、報告書でも指摘していますが、本当に能力を向上させ、長期的に付き合える良いサプライヤーになっているのかをデータで説明しない限り、ステークホルダー(利害関係者)を説得できません。社内でCSRの取り組みを進めるだけでなく、社外への情報発信にも力を入れていかなければならないという議論をしました。

――会社法の改正で内部統制が強化されたり、証券取引所がコーポレート・ガバナンスコードを導入するなど、日本企業の内部統制の仕組みが整えられてきています。

 国内的には仕組みはだいたい整ってきたと思います。社内であまりでたらめなことをすると、取締役や監査役、社外取締役が声を上げるようになっています。相変わらず企業の不祥事はありますが、自主的に公表するようになっているのではないでしょうか。

 ただ、先ほども触れたように、大手企業のビジネスは海外の比率が本当に高まっています。特に日本企業はアジアにシフトしていますよね。このため、国内の法律だけを念頭に置いてコンプライアンスや内部統制の仕組みをつくってきた企業にとって、国外の法律に適応できるのかというリスクが高まっています。