斎藤 正一(日経BP環境経営フォーラム事務局長)

欧州の環境規制に直面し環境部署への異動を志願した。事業部との連携を強めながら攻めの環境部への転換を図る。

堀ノ内 力(ほりのうち・つよし)
1962年鹿児島県生まれ。85年九州大学工学部卒業、同年NEC入社。マイクロ波衛星通信装置などの生産技術を担当、2005年環境推進部配属、2012年CSR・環境推進本部長、2014年から現職

 入社後20年間、事業部で身に付けた経験を環境推進部で生かそうと志願して異動した信念の人である。事業部ではマイクロ波衛星通信装置や携帯無線基地局装置の生産技術を担当した。生産技術とは、「もの」を製造するための技術開発を指し、コスト管理を担う。製造業の要となる仕事だ。

 2000年代半ば、欧州のRoHS(有害物質使用制限)指令への対応で環境規制がコストアップになる事態に直面する。海外の法規制動向をいち早く把握して計画的に部品や材料を代替する大切さを知った。環境部署に転じたのは、「化学物質に関する環境規制に対して、全社的に対応する必要性があると感じた」からだ。それまでの経験で設計や調達、製造の知識を得ており、自分が適任との思いもあった。

 環境推進部に来た当初は、毎月、欧州に出張し、欧州委員会と環境規制を巡ってタフな交渉を繰り返した。新たな規制に関して社内の事業部門の担当者と話をする際には、堀ノ内さんのそれまでの経験が役立ったという。環境推進部では化学物質管理をサプライチェーンを含めて、いかにスムーズに進めるかに力を注いだ。

 2012年にCSR・環境推進本部長になり、大きな転機が訪れる。CSR(企業の社会的責任)も所管になったことで東日本大震災後の東北復興支援や、インドでBOP(ベース・オブ・ピラミッド)ビジネスの促進事業を手がけたのだ。これらの活動は欧米から予想以上に高い評価を受け、事業を通じて社会貢献する大切さを知った。

 これがきっかけになり、「環境部もリスク対応だけでなく、事業部と連携して社会に貢献する組織になりたいとの思いが強くなった」と振り返る。リスク対応など守りが中心だった組織から、攻めの環境部への転換である。こうした動きと前後して、事業部が販売する環境関連製品に開発段階から関わるケースも増加した。

 2013年に発表したNECの「2015中期経営計画」では、中期経営方針の3つの柱の最初に「社会ソリューション事業への注力」が明記され、環境推進部と事業部の連携はより取りやすくなった。2014年12月発行の「ICTが支える『気候変動』対策」と題する冊子は、堀ノ内さんの部署が中心になりまとめたものだ。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が報告書で示した8つの主要なリスクを手掛かりに、NECのICT(情報通信技術)がどのように貢献できるかを具体的な事業に結び付けて紹介している。

 事業部と連携する環境は着実に整備されているようだ。堀ノ内さんは今後について、「グループ全社員の意識を高め、特に気候変動という大きなテーマに向けて実のある成果を得ていきたい」と答えた。