聞き手/田中 太郎(日経エコロジー編集長)

「飽和」といえるほど日本の森林資源は豊かになっている。木を切り、活用してこそ、日本の自然環境を守ることにつながる。

太田 猛彦(おおた・たけひこ)氏
1941年東京生まれ。東京大学大学院農学研究科博士課程修了後、東京農工大学助教授を経て東京大学教授、東京農工大学教授を歴任。砂防学会会長、日本森林学会会長、林政審議会委員、日本学術会議会員などを務めた。主な著書に『森林飽和』(NHKブックス)など
写真/鈴木 愛子

――日本には木が多すぎると訴えられた2012年の著作『森林飽和』は、森林が減っていると思い込んでいた人たちにとって衝撃的でした。

太田 猛彦氏(以下、敬称略) 日本の森林は戦後の混乱とその後の開発によって劣化し、今も減少を続けている──。そんなふうに受け止めている多くの人に、日本の本当の森の姿を知ってほしいと思い、この本を書きました。

 林野庁の資料では、日本の森林面積は1966年から2012年まで2500万ha強でほぼ一定です(下のグラフ)。しかし、森林の体積である森林蓄積を見ると、同じ時期に一貫して増え続け、2.5倍以上になっています(同下グラフ)。成長の速い人工林では3倍以上になっています。日本の森林は「飽和」といってよいほど豊かになったのです。

 戦後、経済成長で森林以外の土地利用はがらりと変化しました。都市に住んでいると、宅地や工場が増え、緑がどんどん減っていると感じます。にもかかわらず、どうして日本全体で森林面積が変わらなかったのかというと、かつて日本は「はげ山」ばかりだったからです。開発が進む一方で、はげ山が森林に戻ったから、差し引きの面積は変わっていないのです。

出所:林野庁「森林資源の現況」
注:調査精度の向上などにより、2007年と2012年は単純に比較できない