人材育成こそイノベーション

――店舗開発に手間やコストをかけ過ぎではないですか。

青井 何のためにやっているのかというと、イノベーションのためです。かつては時代の変化が激しくなかったので社内で時間をかけて考えていればよかったのでしょうけれど、現在は外の人の力を借りないとイノベーションはできません。オープンイノベーションというと、企業同士のものを指すことが多いですが、それだけに限らないと思います。外の知見と自分たちの知見をすり合わせることによって、これまでになかった新しい価値をつくることがオープンイノベーションだとすれば、私たちが一番取り込みたかったのは、お客さま、消費者の知見です。

 確かに時間や労力はかなりかかりますが、得るものも大きい。当社の経営理念は「人の成長=企業の成長」です。消費者とのやりとりの中で気づきがあり、新しい発見があり、その人が一段成長する。人が育ち、お店もうまくいけば十分にペイする投資だと考えています。

東京都中野区の丸井グループ本社で。手にするのは社員と一緒に制作した「共創経営レポート」
写真/尾関 裕士

――実は今回インタビューをお願いしたきっかけは、2016年に出された丸井グループの統合報告書「共創経営レポート」のプロジェクトチームに青井社長の名前があったからです。社長自ら20時間以上、議論に参加されたそうですね。なぜそこまで力を入れたのですか。

青井 理由はいくつかあります。経緯からお話しすると当社は2006年から2013年まで主に貸金業法の改正やリーマンショックなどの影響で業績が悪化し、端的に言えば倒産しかけていたんですね。したがって、業績を回復させるため以外のことは何もできませんでした。私は集中治療室に入っていたと言っているのですが、それが2014年ぐらいから一般病棟に移り、退院できるようになりました。それで、これまでできなかった投資家との対話を進めたいと思ったのが1つです。

 もう1つは、共創経営レポートの作成に協力していただいたエッジ・インターナショナル(東京都港区)の代表取締役、梶原伸洋さんから統合報告書についての説明を聞いて、非常に感動したことがあります。一般に統合報告書は財務・非財務の情報を合わせて会社を理解してもらうことだと理解されていますが、その根底にあるもっと大事なことは、財務・非財務に分けて経営を考えるのではなく、合わせて考えるのが統合思考なんだと聞いてピーンときたのです。

 私たちの会社は、純粋持ち株会社の下に事業会社がぶら下がっている形態ですが、社員はすべて丸井グループに所属しています。会社間、事業間の人事異動もけっこうあります。

 なぜそうしているのかというと、会社や事業は違うけれど、別々に仕事をするのではなく、統合して他の人たちにはできないことをしていくためです。それが今一つ実現できておらず、姿勢や価値観が共有できていないと感じていました。共創経営レポートの制作に取り組むことで答が見つかるのではないかと思えたのです。