斎藤 正一(日経BP環境経営フォーラム事務局長)

大和ハウスの環境配慮オフィスの先駆けとなる建物を手がけた。環境部に志願し、オフィスビルや店舗の環境配慮設計を広めた。

小山 勝弘(こやま・かつひろ)
1970年滋賀県生まれ、92年京都大学工学部精密工学科卒、同年大和ハウス工業入社、92~2006年プロジェクト室で大型建築の意匠設計を担当、2006年環境部へ異動、2015年から現職

 「3年間で建築学科出身の同期に追い付く気持ちがあるなら、入社後、建築の大学に通ってもよい」。入社試験で面接官が発したこの言葉が今も心に残っている。精密工学を学んだが、華やかだった建築の世界へ憧れ働きたいと思った。畑違いの学生の思いを受け入れた唯一の会社が大和ハウス工業だった。

 入社して2年間、夜間の短大で建築を学んだ。配属されたのは、自社の建物の設計・施工を担当するプロジェクト室だった。常に新しいことへのチャレンジを課された部署だ。

 大阪本社ビルの建設プロジェクトに関わった後、東北工場のオフィス建設のプロジェクトリーダーになったことが転機となった。グンター・パウリ氏(元・国連大学学長顧問)の感化を受けた幹部の提案で「空調のいらない事務所」を作ることになった。パウリ氏を何度も訪ね、地中熱や太陽熱を使って冷暖房のエネルギー使用量を大幅に削減したオフィスを完成させた。

 シロアリの巣の仕組みを取り入れたことから、社内で「ありづかオフィス」と呼ばれたこの建物は、大和ハウスの環境配慮オフィスの先駆けとなった。「建築の意匠設計をしていたが、室温や気流など見えないものを考えることが楽しかった」と話す。

 オフィス完成後、パウリ氏が社内で、「環境に配慮した建物のタネをまいた。育てるのは皆さんです」と講演した。この言葉は、「環境に配慮した建物を社内に広めたい」と考えていた小山さんの心に火を付けた。2006年、志願して環境部へ異動する。

 当時、戸建て住宅の分野では環境配慮設計をしていたが他の分野では手付かずだったため、オフィスビルや店舗での環境配慮設計に取り組んだ。設計マニュアルや省エネのチェックリストなどを作成、優秀事例を社内で表彰して横展開をした。こうした努力が実り、2012年度と13年度、2年連続で省エネ大賞の最高位の経済産業大臣賞を受賞した。

 2015年からは建物から街へフィールドを広げている。社内にできたプロジェクトチーム「未来まちづくり推進委員会」では、環境など街づくりの8つの価値を示した未来の街のコンセプトを作成した。「建てて終わりだった反省に立ち、街をつくった後もそこで生活する方々とともにソフト面を含めて育んでいく街づくりを目指している」。

 7月、創業100周年の2055年を見据えた環境長期ビジョンを発表した。「地球温暖化防止」「自然環境との調和」「資源保護」「化学物質による汚染の防止」という4つの環境重点テーマに関して、環境負荷ゼロを目指す。ビジョン作成に当たっては環境部が中心になった。社内にまかれたタネは、小山さんの手で大きく育っているようだ。