化学の技術でスマートハウスを進化

――開発推進センターでは、フィルム型のリチウムイオン電池の開発を進めています。

髙下 それが次のテーマです。今の蓄電池には、容量が少ないとか、長持ちしないとか、場所を取るとか、重いとか、安全性に心配があるとか、値段が高いといった様々な問題があります。それらを解消するのが、我々が開発した大容量のフィルム型リチウムイオン電池です。まずは今年度中にモバイル機器向けに提供を開始する予定で、来年度の早い時期に自社の住宅用に展開していくつもりです。

 住宅への蓄電池の採用率は、他社よりは高いのですが、まだ3~4割ほどにとどまっています。自社開発の蓄電池で世の中を大きく変えられるとみています。最終的にはEVなどに使えるようにして、環境に貢献していきたいと考えています。

――化学メーカーとしての技術があるから可能になる戦略ですね。

髙下 その通りです。例えば高機能プラスチックスカンパニーでは、自動車向けの合わせガラス用遮音・遮熱中間膜が世界シェアの5割です。こういうもので売り上げ、利益を伸ばしてきました。軽量化のために、自動車にはガラスが多く使われるようになっています。車内の快適性を守るために、暑さや音を遮る我々の膜が非常に力を発揮しています。

 他にも環境・ライフラインカンパニーのSPR工法があります。硬質塩化ビニル製のプロファイル(更生材料)を既設管の内側に巻き、道路を開削せずに下水道管を修復する技術です。

 下水道管の老朽化は日本に限らず世界で社会問題になっていますが、特に災害列島といわれる日本は深刻です。地震や台風、大雨などによる道路の陥没は、小さいものも含めると国内で5000件、東京都だけでも1000件ぐらいは毎年、起きています。設置から50年間を過ぎた下水道管は延べ1万kmを超えるといわれ、インフラは大変なことになっています。

 修復のために道路を開削すると、廃棄物を処分するのに困るし、工事中の騒音やほこり、交通渋滞の問題もあります。SPR工法は開削せず、下水を使いながらでも修復できます。工期も短くなるし、コストもかかりません。東京都はこの工法を活用していく方針を示しており、当社は指定業者になっています。

■成長の柱は環境貢献製品
エネルギーを効率的に使って光熱費を減らすスマートハウス(左上)や、硬質塩化ビニルで老朽化した下水道を修復するSPR工法(右上)、世界トップシェアを誇る自動車の合わせガラス用遮音・遮熱中間膜(左下)など環境貢献商品で事業を拡大。フィルム型リチウムイオン電池(右下)など、次世代の技術開発を進める

 ただ、これだけメリットが多い技術にもかかわらず、海外ではなかなか普及していません。管理する行政に下水道管を抜本的に修復する予算がないため、陥没などが起きたときの応急処置しかしません。その場合は、昔ながらのやり方で工事することが多いです。特に欧州は公共財政が厳しく、下水道のように見えないところにお金をかける余裕はないのでしょう。欧州での事業は一度見直しましたが、今後もトライアンドエラーでチャンスを探っていきます。