「三方よし」から「八方よし」へ

――日本的経営の代名詞である「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」を発展させて、地域や経営者まで含めた「八方よし」の「新日本的経営」を提案しています(下の図)。

■ すべてのステークホルダーに目を向けた「八方よし」の経営
出所:『持続可能な資本主義』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

新井 「八方よし」は8つというわけではありません。全方位という意味です。企業によって置かれている立場は違いますから、8つでなければならないということではないです。言いたいのは、時代が変わったので、三方だけでなく、いろいろなステークホルダー(利害関係者)を意識した経営をしなくてはいけないということです。

――たしかに原料の仕入先が児童労働に加担していないかなど、サプライチェーンの隅々まで配慮しなければならなくなっています。

新井 最も強調したいのは、経営者もステークホルダーの一つとして株主などと同じように位置付けたことです。経営者だけ会社の内側にいるのはおかしいでしょう。会社は経営者のものではなく、公器なんですから。それを表しているのです。

――鎌倉投信をどこまで大きくするかの目標はあるのですか。

新井 鎌倉投信はベンチャー企業であって、大企業になることを目的にはしていません。なぜかといえば、社会は変えるものではなく、変わるものだと考えているからです。変わるきっかけをつくることはできるかもしれませんが、変えるというのはいかにも傲慢です。社会が「いいね」と思ったときには、ぼくらの商品をまねして他の人たちもやっているはずです。別の言い方をすると、「みんながいい会社になったから、いい会社に投資する投信なんていらない」となることが社会課題の解決なんです。だから、結果的な大きさを想像しても仕方ありません。コントロールしなければいけないと思っているのは、急に拡大することによってうちの運用商品らしさがなくなることです。

写真/鈴木 愛子