斎藤 正一(日経BP環境経営フォーラム事務局長)

ソニーの出井・元CEOのスピーチライターを長く務めた。CSRと本業の一致を目指し、社内各部門との交渉を進めていく。

飯塚 優子(いいづか・ゆうこ)
神奈川県出身。1992年津田塾大学学芸学部卒業、同年ソニー入社、ソニー秘書部最高顧問室課長などを経て2009年退社、2012年住友林業入社、2015年4月から現職

 大学卒業後、ソニーに入社し、元CEO(最高経営責任者)、出井伸之氏のスピーチライターを15年間務めた。トップの情報を社内外に発信するのは難しい仕事だ。どのようにすれば、分かりやすく親しみやすい情報発信ができるか。模索する中で広報やコミュニケーションのセンスを磨いた。

 出井氏の社内外での講演スピーチを書く他、イントラネットに掲載する文章も長く執筆した。仕事の話題以外にも最近読んだ本や出張先の食事の話などを書き評判になった。この文章は、後に「ONとOFF」と題した書籍になり、文庫本と合わせて15万部が売れたという。「ソニーでは一貫してコミュニケーションをキーワードにした仕事に関わることができ、エキサイティングだった」と振り返る。

 その後、ソニーCSR部に約2年間在籍し退職。外資系企業2社を経て2012年にヘッドハンティングされた。

 住友林業入社後は主に広報を担当しながら、CSR(企業の社会的責任)関連の仕事も見てきた。「良い仕事をしている割に謙虚すぎる会社」というのが最初の印象だ。特に住宅部門以外の担当者にこの傾向が強い。JX日鉱日石エネルギーと芝を使った土壌汚染の改良技術を開発し環境省から大臣表彰を受けたとのニュースを公表し、反響を呼んだことがあった。当初、現場の担当者が社外発表に尻込みしていたが、先方の広報と直接かけあって共同発表にこぎつけた。

 2015年4月からCSR推進室長になった飯塚さんは、「住友林業のCSR経営をより着実に浸透させていきたい」と力強く話す。他社で経験を積んできた目には、同社のCSR活動は経営陣も含めてまだ本業のおまけであるとの意識から抜け切れていないと見えるようだ。

 7月末に出した「CSRレポート2015」では、グループの経営理念とCSR経営の関係を整理し重要課題を5つに集約した。CSRと本業の一体化を掛け声倒れにしないために、来期の予算を審議する中で「住宅を何棟売ります」と同じ枠で、「新築現場から出る廃棄物を何百kg減らします」といった目標を出してもらおうと考えている。この実現を目指し、社内各部門との交渉や社内への情報配信が大切な仕事になる。

 父親が商社マンで海外での生活が長く、モロッコやバヌアツなどでも暮らした。「含意を読み取る日本的なコミュニケーションよりは、正確に物事を伝えることを心がけてきた」と語る。はきはきした物言いは魅力的だ。住友林業にあまりいなかったキャラクターだけに、飯塚さんの登場でどんな方向に進むのか。今後の展開を見守るのが楽しみになった。