斎藤 正一(日経BP環境経営フォーラム事務局長)

欧州に21年間駐在、既存のビジネスを変革する仕事に携わった。リコーの環境経営のステップアップという新たな変革に挑む。

加藤 茂夫(かとう・しげお)
1959年神奈川県出身、82年早稲田大学法学部卒、同年リコー入社、90年~2010年まで欧州駐在、2010年グローバルマーケティング本部グローバルMDSセンター所長、2015年から現職

 高校時代、「公害で苦しむ人を救いたい」と弁護士を志望した。念願の法学部に入ったものの入学後は「狂言研究会」に入り、芸の世界に魅了されてしまった。狂言の道に進もうとしたが“師匠”の説得で断念し、リコーに入社した異色の経歴の持ち主だ。

 海外本部の配属になり、30歳から21年間、欧州に駐在した。オランダでOEM(相手先ブランドによる生産)の複写機を販売する仕事に携わった後、リコーイタリアに11年間勤めた。副社長として代理店販売を直接販売に切り替え、売り上げを4倍に伸ばして市場シェアをトップにした。英国の欧州本部では域内各国の販売体制の見直しに着手し、各国に数社あった販社を1社に統合した。欧州時代はどの国でもそれまでのビジネスのやり方を変える仕事に携わった。「絶えず『変革』する仕事をしてきたので、飽きることなく仕事ができた」と振り返る。

 帰国後はグローバルMDSセンター所長に就任した。当時、リコーは製品だけの販売から製品を取り巻くサービスを含めて売るビジネスモデルへの転換を急いでいた。この転換をグローバルでいかに進めていくかを担った。日本でもリコーの大きな変革に関わったわけだ。

 海外営業畑で過ごしてきた加藤さんに、2015年4月、サステナビリティ推進本部長の辞令が下った。三浦善司社長からは、「リコーの環境経営をお客様や社会全体の課題を解決するものへとステップアップさせたい。その手伝いをしてほしい」と直接、言い渡されたという。

 2016年4月に導入した「リコーサステナブルプロダクツプログラム」は、環境経営を進化させるためのツールになるものだ。地球にやさしく人にやさしいサステナブルな製品を自社で認証する。「リコーのテクノロジーを使って、省エネやユニバーサルデザインなどに対応した製品を世の中にどんどん出していきたい」と話す。

 2015年末の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)にはオフィシャル・パートナーとして参加した。英蘭ユニ・リーバのポール・ポールマンCEOなど名だたる経営者が温暖化問題に対する危機感を語った後で、「これはビジネスチャンスでもある」と訴える姿に感銘を受けたと話す。この会議は、高校時代、公害問題の弁護士を目指した加藤さんに大きな影響を与えたようだ。

 今後の取り組みについて聞いたところ、「持続可能な開発目標(SDGs)で示された17の目標の中で当社が貢献できる部分がある。こうした目標を参考に社会課題解決型のビジネスモデルをより明確にしてリコーの成長につなげたい」と話してくれた。三浦社長のもと新しい変革に挑む決意が感じられた。