聞き手/田中 太郎(日経エコロジー編集長)

途上国の森林を保全するREDD+は、長期的に最重要な地球温暖化対策である。2020年以降の温暖化対策の枠組み決定を前に、先進国の陣取り合戦は既に始まっている。

天野 正博(あまの・まさひろ)
1970年名古屋大学農学部林学科専修卒業、72年名古屋大学大学院農学研究科修士課程林学専攻修了、農学博士(東京大学)。農林水産省林業試験場経営部研究員、独立行政法人森林総合研究所森林管理研究領域長を経て、2003年4月から現職
写真/鈴木 愛子

――2015年末、国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)が開かれます。森林の劣化を防いで温室効果ガスの排出を減らすREDD+の議論は進みますか。

長期的視点に立てば欠かせない

天野 正博氏(以下、敬称略) REDD+を気候変動枠組み条約の中に組み入れることには既に世界が一度、合意しています。制度設計もかなり進み、ポイントは固まってきています。大多数の国がREDD+が必要だと考えています。

 ただ、懸念材料の1つは、このところボリビアが強硬に反対していることです。森林減少が起こっていないアフリカのコンゴ川周辺の国がそれに同調し始めています。気候変動枠組み条約は全会一致が原則なので、一国でも反対があると議論が前に進みません。ボリビアの主張は、森林のように大切なものを金銭に換算して取引する経済の仕組みの中で扱うのはおかしいというものです。さらに、森林の保全は気候変動だけの問題だけではないとも主張しています。ボリビアとどのように妥協するかが焦点になるでしょう。

 もう1つの懸念は、COP21での議論が各国の削減目標をどうするかの政治的な駆け引きに傾いてしまうと、森林の議論が脇に追いやられてしまいかねないことです。一方で、インドネシアやブラジルのように、森林保全をベースにした削減目標を提出している国もあります。そういう国がどのような主張をするのかに注目しています。

――いつからREDD+が正式に始まるか、現時点では分からないということですか。

天野 まだ議論が決着していません。2020年以降に京都議定書のCDM(クリーン開発メカニズム)をどうするのかも決まっていないので、議論がしにくいところです。また、各国が設定した削減目標ついてクレジット(排出枠)をどう扱うのかも決まっていません。

――2020年以降の枠組みの全体像が固まらなければ、REDD+の位置付けも定まらない。

天野 ただ、長期的な視点に立てば、吸収源としての森林が非常に重要になるという認識は途上国にも広がっています。2014年、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書(AR5)が公表されましたよね。

――気温の上昇を2℃未満に抑えるためには、2050年の温室効果ガス排出量を2010年比40~70%減にし、2100年にはゼロにしなくてはならないというシナリオが紹介されました。

天野 2100年に排出量をゼロにするには、森林という吸収源は欠かせません。特に熱帯林は北方林の5倍ぐらいの速さで成長します。吸収能力の高い熱帯林を枠組みに取り入れなければ対応はできないという認識ができてきたのは、AR5のシナリオが出たタイミングが良かったのだと思います。