聞き手/田中 太郎(日経エコロジー編集長)

欧州連合(EU)が2015年12月に公表したサーキュラー・エコノミー(CE)パッケージ。日本の循環型社会とどこが違うのか、日本企業はどのように対応すべきかを聞いた。

原田 幸明(はらだ・こうめい)
1974年東京大学工学部卒業、79年東京大学大学院博士課程修了(工学博士)、80年科学技術庁金属材料技術研究所(現・物質・材料研究機構)入所。エコマテリアル研究センター長、元素戦略材料研究センター元素戦略調査分析統括グループ長などを経て現職。サステイナビリティ技術設計機構代表理事などを務める
写真/佐藤 久

――2016年5月に開催されたG7環境大臣会合で「富山物質循環フレームワーク」が採択されるなど、資源の有効利用に注目が集まっています。

原田 幸明氏(以下、敬称略) そうですね。

「静脈」よりも「毛細血管」

――そこで気になるのが、欧州連合(EU)が資源循環政策をまとめた「サーキュラー・エコノミー(CE)パッケージ」です。エコデザインの推進や再生資源の品質基準の策定などがありますが、エコデザインなどは目新しくありません。日本の循環型社会の概念とどこが違うのですか。

原田 CEを「循環経済」と訳す方が多いですが、大きな誤解を生むと思っています。日本は循環型社会の構築を進めてきたので、単純な循環をイメージしてしまうんでしょうね。むしろ「代謝経済」とでも呼んだほうがよいかもしれません。資源の流れを血液循環にたとえて動脈や静脈と言いますが、日本の循環経済は基本的に動脈から静脈への大きな流れを循環だと思っています。しかし、CEは、血管の90%以上を占める「毛細血管」をうまく生かしていこうという考え方なんです。日本の循環型社会とはかなり異質なものだと考えた方がいいと思います。

――具体的にどういうことですか。

原田 例えば日本では、携帯電話を集めてレアメタルを取り出すというように、ある製品が使用済みになったらリサイクルして元の素材に戻してやればいいという発想ですよね。そうではなくて、製品の使用が終わっても、「また使えるんじゃないのか」「この部品なら使えるんじゃないか」と考える。場合によっては、使っている途中から「これはみんなで使えるんじゃないか」といった具合に多様な使い方をする。使用中・使用済み製品に関して多様な生涯の送り方を考えていこうというところにポイントがあるんです。

――みんなで使うというのは、ライドシェアのような使い方ですね。

原田 リサイクル業者に持っていく前にやることがいっぱいあるのではないかというのが基本の考え方です。使用後に製品としてリユースし、パーツとしてリユースし、場合によっては別のものに作り変えることもあるわけです。一度、経済活動の中に組み込んだ資源を徹底して経済活動の活性化に使うことによって、最終的に資源の利用を少なくし、廃棄物の排出を少なくする。

――リサイクルで素材に戻すよりも、むしろ再利用やシェアなどが中心になっていくということですか。

原田 そうです。リサイクルにはなるべく回さない方がいいことになるわけですから、対応を間違えると、リサイクル業者はつぶれる可能性があります。現に今、自動車業界ではそういう話が出てきています。鉄スクラップの価格がどんどん落ちているため、解体業者が何を考えているかというと、自動車をスクラップにしないで利用することです。スクラップにするのは最後の手段で、その前にいろいろな部品を取り外したり、場合によっては自動車全体をボディとしてリユースしたりすることによって付加価値を生み出していくのだと、現場の人たちは言っています。既にそういう方向に向いているんです。