斎藤 正一(日経BP環境経営フォーラム事務局長)

商社マンとしての仕事を通じて対話の重要性を学んできた。「経営に寄り添うCSR」の社内への浸透を目指す。

角田 裕一(つのだ・ゆういち)
1963年大阪府生まれ。85年一橋大学経済学部卒業、同年住友商事入社、投資事業本部などを経て、97年に機電システム本部へ。2013年国内機電事業部長を経て2015年4月から現職

 投資事業部門や、各種の機械を国内メーカーに輸入販売する事業部門に長く在籍した。インタビューの最中、繰り返し出た言葉は対話だ。人なつっこい笑顔を絶やさずに、仕事に対する思いを熱く語る。社内外を問わず人間関係を大切にする、古き良き商社マンだと強く感じた。

 30代半ばまで約10年間在籍した投資事業部門では、同社が手掛ける投資案件を審査したり、担当の営業マンと共に投資案件を組成する仕事に携わった。付加価値の高い提案をしないと営業マンから相手にされない厳しい仕事だったが、やりがいがあった。その後、希望が通り配属された営業部門では、約8年間、建材やセメント業界などにプレス機械などの工作機械を輸入販売する業務を主に担当した。

 企業の内部統制に主眼を置いた「日本版SOX法(J―SOX法)」をインフラ事業部門に根付かせる重責を担ったこともある。「忙しい営業マンに法律の大切さを分かってもらうには、とことん対話をしなくてはいけない。投資事業部門時代に培ったコミュニケーション力が役立った」と振り返る。

 「指揮者の仕事は、全体の調和を見てその組織を最高のパフォーマンスに持っていくこと。決して指揮者が偉いのではない」──。今もバイブルにしているのは、営業時代、直属の本部長が自らを指揮者に例えて話したこの教えだ。角田さんはこの教えを「オーケストラ理論」と名付け、「組織を動かすには各人の仕事をリスペクトしながら、メンバーの個性をみることの大切さを学んだ」と話す。この言葉に出会ってからは、絶えずこの教えを胸に部下と接しているのだそうだ。

 2015年4月、これまで全く接点のなかった環境・CSR部長の辞令を受けた。「CSRと経営は別物ではなく常に寄り添っていることを、社員一人一人に浸透させていきたい」──。しかし、就任から半年がたった今、新部長が語る針路は明快だった。

 「今後、部長として何がしたいか」との問いには、児童労働などの問題をサプライチェーンの中のCSRリスクととらえることで、経営とCSRの結び付きを社員に実感してもらう。そのためにCSR研修を開いたり、階層別研修のなかでこうした話題を取り上げる、と具体的な回答が返ってきた。「『企業の社会的責任』と訳されているCSRを、『企業の社会的対応力』と訳し直すことで、環境・CSR部の仕事をより未来志向のものに変えていきたい」との言葉には力を込めた。

 CSRと経営を別物と考える社員は今も少なくない。J―SOX法の時と同様にいかに営業部門などと対話を重ね、角田さんの考えるCSRを社内に定着させていくか。その手腕に大いに期待したい。