斎藤 正一(日経BP環境経営フォーラム事務局長)

経団連に出向し機関誌の編集などに携わり、視野を大きく広げた。CSR部門を統括、新しい時代の流れを捉え発信したいと話す。

佐田 朋彦(さた・ともひこ)
1966年東京都生まれ、89年早稲田大学商学部卒、同年アサヒビール入社、95年経済団体連合会出向、2000年人事戦略部プロデューサー、2009年九州統括本部総務部長、2011年から現職

 「就職活動でOB訪問をした時に会う人が皆明るく、社員に魅力を感じた」と入社動機を説明する。佐田さんが会社訪問をした1988年は前年に発売したアサヒスーパードライが大ヒットし、業績が上向いた時期に重なる。会社の勢いが社員の輝きを引き出していたのだろう。

 最初の3年半は東京の八王子支店で営業マンをサポートする営業企画の仕事をした。その後、3年間、営業の第一線で働いた。この時代、業務用酒販店との関係で、「自分を理解・信頼してもらうことの大切さを学んだ」。

 経済団体連合会(当時)への出向が、仕事上の転機になった。95年から2年間、広報部に所属し機関誌の編集などに携わった。著名な政治家や経営者の取材に同行したほか、地球温暖化防止京都会議(COP3)に向けて経団連がまとめた環境自主行動計画を機関誌に掲載したこともあった。「ビールの営業現場と全く違う世界だったが、視野を大きく広げることができ勉強になった」。

 アサヒグループ各社の広報や人事総務部門を経験し、2011年末、アサヒグループホールディングスの本社CSR部門ゼネラルマネジャーに就任する。グループのCSR部門を統括する役どころだ。就任後、最初にCSRの活動領域と重点テーマの見直しに取り組んだ。2012年に「食と健康」「環境」「人と社会」という3つの活動領域と9つの重点テーマを設定し、2013年に発表した。

 CSRの目標が明確になったからであろう。2016年2月発表のアサヒグループ中期経営方針では3つの重点課題の1つに「サステナビリティの向上を目指したESGへの取り組み強化」が明記された。

 東日本大震災の復興支援にも力を入れる。岩手県では、郷土芸能の保存・発展に寄与する活動への支援を始めた。津波の被害を受けた地域では地元の祭りに必要なものまで流されていた。「被災地を回り、祭りが世代間の人をつなげる重要な役割を果たしていることを改めて知った」と支援に動いた経緯を説明する。現在は岩手県を窓口にアサヒグループが助成するかたちで支援を続ける。このほか宮城県東松島市では被災した土地の有効活用を目指す「希望の大麦プロジェクト」などを実施する。

 「マジョリティーは現在のために、マイノリティーは未来のために」(未来を見据えた少数意見を大切にする)という言葉が座右の銘、経団連に出向していた時、ある著名な経営者が話していた言葉だ。「CSVやESGなどの新しい時代の流れを捉えた言葉をいち早く感じ取って社内に発信していきたい」。CSR部門は、良い意味での少数意見を積極的に発信していく部署でありたいと願っている。