斎藤 正一(日経BP環境経営フォーラム事務局長)

研究所で印刷機や関連機器などを開発し研究者のトップを務めた。2016年4月に就任、「企業価値を高める活動」に注力する。

森 浩二(もり・こうじ)
1960年千葉県出身、82年東京農工大学電子工学科卒、同年大日本印刷に入社し生産技術研究所に配属、2007年技術開発センター長、2012年、写真部材系事業部の本部長、2016年から現職

 大学で電子工学を専攻したことから入社後は生産技術研究所(当時)の配属となり、長く研究者としての道を歩んだ。

 最初の仕事は、印刷機の上で不良品を見つけて取り除く検査装置の開発だった。パソコンが無い時代であり、画像処理の基盤を自ら作った。思い切って新聞発表をしたところ、業界紙に記事が載ったという。その後、グラビア印刷機本体の開発なども担当した。「世の中にない装置の開発に挑戦していた。やりがいがある仕事だった」と振り返る。

 研究所時代は多くの工場を訪問し、改めて印刷技術が幅広い分野で利用されていることを実感した。自動車のインパネ(計器盤)では、部材を水の中にくぐらせて印刷していた。大日本印刷は、「空気以外は何でも印刷できる」と教わっていたが、まさに水に印刷する技術だと感心した。このほか写真製版の技術がディスプレー製品などにも応用されている現場も見た。

 2007年に技術開発センター長に就任し、同社の研究者のトップに就いた。2008年からは光学フィルム系事業部の副本部長や写真部材系事業部の本部長などを務め、工場長も経験した。

 大日本印刷は2016年4月にCSR推進室と環境安全部が一緒になり、CSR・環境安全部が誕生、森さんが初代の部長に就任した。CO2削減や省エネなど環境に関することは工場長時代の経験から分かっていたが、ことCSRに関しては知識が無かったという。この半年間、外部のセミナーなどに通い、一から学んだ。

 これまで環境やCSR部署に在籍したことが無かっただけに、新鮮な目でこの分野を見ることができるのだろう。「CSR・環境安全部の仕事は、最終的に企業価値を高めることにつながる活動」と考えるに至ったそうだ。

 既に企業価値を高める活動への取り組みは始まっている。この9月には、製品の製造工程で排出される紙を活用し、再製品化する資源循環システムを構築した。リサイクルパルプの分野でFSC認証をアジアで初めて取得し、コースターとして自社内で再利用を始めた。同じ月に持続可能な指標として有名な「ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス(DJSI)」の「アジア・パシフィック」の構成銘柄にも選ばれている。

 好きな言葉は、「艱難汝を玉にす」。入社した時の上司から教わった言葉で、人は困難を乗り越えた時に人として磨かれるとの意味だ。「研究開発で壁にぶつかったとき、いつもこの言葉を思い出して乗り越えてきた」と話す。新任のCSR・環境安全部長として、再びこの言葉を心に刻んでいるようだった。