果てしない価格競争には加わらない

――顔が見えるということを電気の付加価値にするなら、切り口は様々あるということですね。

大石 ぼくがすごく感じているのは、価格で切り替えた人たちは、もっと安い小売事業者が出てくればまた価格で切り替わるということです。激安でお客さんを一時的に獲得しても、オセロゲームのように取り返されてしまうでしょう。先ほど説明した15%の人たちを300社で取り合うようなものです。果てしない価格競争になっていきます。ベンチャー企業がそこに足を踏み入れても勝算はありません。

 ぼくたちのビジネスは、単に再エネの電気を供給しているというよりも、生産者と消費者を顔の見える関係でつなぐ仕組みを提供することです。「個対個」の電力ビジネスを実現しようとしているところが、他社とは最も違います。

――個対個ですか。

大石 はい。例えばメディアもSNSのような個対個の世界が広がってきていますし、大きなトレンドではないでしょうか。

――確かに、ライドシェアや民泊のようなシェアリングビジネスでも、個対個の取引が広がっています。

大石 エネルギーの世界でも、(ライドシェアの)米ウーバーや(民泊の)米エアビーアンドビーのような個対個を結び付けるビジネスのモデルケースをつくりたいですね。個対個のつながりができれば、そこに新しい価値が生まれると思います。

仕組みさえあれば誰でも電気を売れる

――個対個で電気を取引できるシステムは社内で作っているのですか。

大石 オリジナルです。クラウドシステムを利用して電気を流通させる「enection(エネクション)」というシステムを米セールスフォース・ドットコムと一緒につくりました。一部の他の新電力にも販売しています。少人数・低コストでオペレーションができるのと、「N(複数の個)対N(複数の個)」の取引を実現できるという特徴を持っています。小さな発電所でも登録できて、誰でも売れるという思想で作られた取引のプラットフォームは、他にはありません。

――価格以外の付加価値で電気を売るという発想が生まれたきっかけは何だったのですか。

大石 携帯電話のバッテリーが切れていた時に、たまたま地下鉄の車内で見かけた女性が携帯型のソーラー充電器をかばんにぶらさげていたのを見て、「この女性の電気が欲しい」と思ったのがきっかけです。誰でも発電でき、売る仕組みさえあれば、誰でも売れることに気づきました。

――2011年に起業してから、エネルギーへの意識が高い女性たちを巻き込んで「エネギャルイベント」を仕掛けたり、携帯型の太陽光発電シート「soramaki(そらまき)」を発売したりと、独自の発想で様々な事業を展開してきました。現在の事業の中心は何ですか。

大石 2016年9月期の売上高は約20億円で、太陽光発電やバイオマス発電などの電源開発事業が売り上げの中心です。この他、先ほど説明した顔の見える電力のような電力小売事業があります。次の2017年度9月期は、電力自由化に伴って電力小売事業が大きく伸びると見込んでいます。それ以外にはsoramakiなどのパーソナル発電事業があり、次世代エネルギーの開発も名古屋の研究センターで進めています。「ベランダソーラー」や「無線送電」「発電するカーボン」といったテーマで大学などの研究機関と共同研究をしています。

数十万人のためのプラットフォーム提供が目標

――電気の取引の将来増をどのようにイメージしていますか。

大石 例えば、様々な人が発電した電気をある企業にまとめて供給します。自分たちの電気でできあがった商品やサービスには、愛着がわくはずです。応援するためにみんなで買おうといった具合に、電気を通して人と人、人と企業のつながりが生まれてくると思うのです。企業にとってはこんな将来もあるのではないかというイメージを持っています。

――その時にみんな電力はどうなっていますか。

大石 プラットフォーマーと言うとおこがましいですが、何万、何十万という発電所と何万、何十万という人がぼくたちを通じて電気のやりとりをする。そんなプラットフォームを提供することが目標です。

写真/佐藤 久
■変更履歴
大石英司社長のお名前に誤表記がありました。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2017/02/21 17:00]