聞き手/田中 太郎(日経エコロジー編集長)

日本有数の企業を束ねて衣料品やプラスチック製品のリサイクル・プロジェクトを実施。多くの人がリサイクルの行動を起こすには、ワクワク感が必要だと主張する。

岩元 美智彦(いわもと・みちひこ)
1964年鹿児島県生まれ。北九州市立大学を卒業後、繊維商社に勤務し、再生繊維の開発やリサイクルのビジネスモデル構築に携わった。2007年1月、日本環境設計を設立。2015年10月、社会起業家の国際的なネットワークであるアショカのフェローに選ばれた
写真/鈴木 愛子

――2015年10月21日は、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー パート2」で、主人公がクルマ型のタイムマシン「デロリアン」で行き着いた未来です。この日に合わせて、使用済み衣料品でつくったバイオエタノールを燃料に混ぜ、東京・お台場でデロリアンを本当に走らせてしまった。イベントは大成功だったそうですね。

岩元 美智彦氏(以下、敬称略) はい。一般の参加者は、公式には750人と発表していますが、会場に入りきれない人も倍以上いて、とにかくすごかった。英BBCや米CNNも今回の取り組みを紹介してくれました。

――どうして、このようなイベントを考えたのですか。

岩元 2007年1月に日本環境設計を創業した時から、この日にデロリアンを走らせたいと言っていたのです。大学時代に映画館で見た、ゴミでクルマを走らせるシーンがとても印象的でした。いつかは自分で実現したいと思っていました。

 期限を区切って大きな目標を立てると、みんな同じ目線でがんばれます。当社は小さなベンチャー企業ですが、運営しているリサイクルの仕組みには、イオンやセブン&アイ・ホールディングスをはじめ約150社に協力していただいています。それは、循環型社会をつくるという大きな目標を共有できているからだと思います。

――イベントが実現したのは、広報担当の沖田愛子さんが米NBCユニバーサルにかけた1本の国際電話がきっかけだったそうですね。

岩元 そうです。熱い“ラブレター”と熱いメッセージを伝えたことがよかったのです。

2015年10月21日、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー パート2」(1989年公開)に登場したクルマ型のタイムマシン「デロリアン」を東京・お台場で走らせるイベントを実現。日本環境設計が使用済み衣料から製造したエタノールを混ぜた燃料を使っている。下写真が岩元社長

どの企業にも、官庁にも「侍」はいる

――今回ばかりでなく、著書『「捨てない未来」はこのビジネスから生まれる』からは、まずぶつかってみるのが岩元さんのやり方だと読み取れます。

岩元 うちの事業はゼロからのスタートじゃないですか。相手に何回もぶつかって、考え方を分かっていただくというのが基本です。不要になった衣料品を回収してエタノールをつくる「FUKU-FUKUプロジェクト」や、おもちゃや雑貨などを集めてプラスチックをリサイクルする「PLA-PLUS(プラプラ)プロジェクト」の協力企業は、ほとんど自分たちで開拓しました。だから気持ちが通じています。

――「FUKU-FUKUプロジェクト」を立ち上げた際の良品計画の金井政明会長をはじめ、支援してくれる多くのキーマンと出会っていますよね。

岩元 魔法はありません。まず当たる。何回も当たる。同じ人にも何回も当たる。以上です。「セブンさんとイオンさんは絶対に手を組まないよ」などと耳打ちする人はいましたが、実際に当たってみるとそうではありませんでした。

――プロジェクトを開始する前に、2009年度の経済産業省の「繊維製品リサイクル調査事業」で、回収ボックスを置いた店舗の来店客が増えたという調査結果が出ました。増えると予想していましたか。

岩元 いいえ、びっくりしました。非常に価値のある調査で、分厚い報告書は企業に協力をお願いするのに効果的でした。

――「PLA-PLUSプロジェクト」もそうですが、国の実証事業に多く参加されていますよね。

岩元 それも、コネがあるわけではなく、何度も当たっているからです。どこの企業にも、官庁にも「侍」がいます。何度も当たり、考えをきちんと説明すれば、理解してくれ、ひと肌も、ふた肌も脱いでくれるのです。