投資撤退は「名誉ではない」

――投資撤退(ダイベスト)に取り組む投資家もいます。

ウェイグッド 安易に投資撤退して立ち去るよりも、商業的な関心と道徳的な義務を抱える株主保有者として、石炭関連事業を手掛ける企業の戦略に影響を与える方が気候変動の抑制には有効に働くと考えます。

 株式を保有している投資家は、企業が低炭素型のビジネスや再エネの採用に移行するのを助け、変化を推奨する役割を果たすことができます。株式の売却は、投資家による「エンゲージメントの失敗」の証左です。「名誉」ではありません。

 ただ私たちは、アビバの株式資産の運用では、道義的な理由に基づき売却を決定する権利と責任を担っており、石炭株を売却する可能性もあります。

――アビバは、世界の有力な大手企業161社に対し気候変動対策とTCFD提言に基づく情報開示を求める機関投資家の組織、「クライメートアクション100+(CA100+)」に参加しています。アビバ・インベスターズの役割は。

ウェイグッド これまでもCA100+の前身といえるイニシアチブに参加し、積極的にリーダー役を務めてきました。例えば「IIGCC(気候変動に関する機関投資家グループ)」や、企業に対し「CDP気候変動」で「A」スコアを獲得することを求める機関投資家の組織「エイミング・フォーA(Aを目指せ)」イニシアチブなどで、CA100+も継続しています。

 CA100+では電力業界に対する作業グループの共同リーダーを務め、世界で実施した6回の共同エンゲージメントに参加し、そのうち2回はリーダー役を務めました。

 CA100+のエンゲージメントは、正式には始まったばかりですが、それよりも先行してCA100+の対象企業に指定された英国企業2社の年次総会に出席したり、温室効果ガス排出量の多いチェコの企業経営層と直接対話を進めています。

――最も取り組みが進んでいる国は。

ウェイグッド さまざまな国や地域で、企業の気候関連情報開示とガバナンスやリスク管理プロセスとの統合が改善されつつありますが、英国は特に進んでいると評価しています。

――日本企業の取り組みをどのように評価しますか。CA100+はトヨタ自動車や新日鐵住金など日本の10社にも注目しています。

ウェイグッド CA100+としてトヨタや新日鐵に対するエンゲージメントは、日本の金融機関が担っているので、私は言及できません。

 京都議定書が誕生した国ですが、一般に、我々が期待しているほどには気候変動対策の進展が早くないとみています。とはいえ、「CDP気候変動2017」でAスコアを獲得した企業を集計した「Aリスト」に、日本は米国に次いで2番目に多くの企業が名を連ねました。コニカミノルタや三菱電機、ソニーなどはパイオニアとして注目されました。

 地球温暖化を2℃以下に抑えるために必要な、科学的根拠に基づく温室効果ガス削減目標(企業版2℃目標、SBT)の設定でも日本は積極的であると評価しています。64社がSBTの設定を約束しており、パナソニックやソニー、積水化学工業などは既に科学に整合した目標であるとの承認を受けています。

 加えてイオンや富士通、リコーなどは電力消費の100%を再生可能エネルギーで賄う企業連合「RE100」に参加し、電力調達の変革に取り組んでいる。また、大手機関投資家である日本生命保険などが、石炭火力発電所に対する資金の供給を中止しています。

 先ほどダイベストメントに関する我々の方針について説明しました。パリ協定の理念を受け入れないままの企業に対し、我々は直接対話を求めています。なかには変化の兆しが見えず、「投資停止リスト」に登録せざるを得ないケースがあります。その1つが、日本の電源開発(Jパワー)でした。我々は株主資本とアビバの投資対象の両方でJパワーを除外、つまり売却しました。

経営者の責任を明確にしたい

――取り組みを加速すべき業界は。

ウェイグッド TCFD提言に賛同する企業が日々増え、政府や金融機関にも広がりが見られます。証券取引所にも、TCFD提言に基づく気候リスク情報開示を強化する努力が進み始めました。企業のESG開示ガイダンスを発行した取引所の数はTCFDが2015年に最初の案を策定して以来、2倍以上に増えています。

 投資顧問会社もTCFD提言への支持を強めています。議決権行使助言サービスの米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)や米グラスルイスは2018年、気候変動に関わる株主提案に有利な投票を推奨する意向を示しました。

 TCFD提言は、国境を越えて投資家と企業が対話するための情報開示方法のスタンダード(標準)になりつつあります。ただ、自発的な情報開示だけでは気候変動による最悪の影響を緩和するスピードが加速しません。世界の規制当局が、TCFD提言を取り入れる必要があります。

 そこで世界の証券取引規制当局が参加する「証券監督者国際機構(IOSCO)」に、TCFD提言を支持するように求めています。また、経済協力開発機構(OECD)に「コーポレート・ガバナンス原則」を改訂し、気候変動を含む長期的なリスク管理は企業の経営層の責任であると、明確にすることを求めています。

 この2つの機関が腰を上げれば、投資顧問会社や信用格付け機関までを含むより多くのステークホルダーが、気候リスクの開示を企業に対して求める積極的な役割を果たすようになるでしょう。