5年かけて戦略的開示へ

 バリューチェーンを見渡して見落としのない情報開示が重要になる。場合によっては製品需要のシナリオを加える必要も生じる。シナリオは複数、用意し検討したい。

 また、自社が重要と判断した開示項目が投資家の関心に合致するとは限らない。資産運用会社のアセットマネジメントOne運用本部の寺沢徹・責任投資部長は、「投資家との対話を通じて、どのような取り組みがその企業に求められているか、評価されるか、見極めてほしい」と話す。

 現在は、過去に評価したリスクと機会をTCFDの枠組みに沿って整理し直したにとどまる情報開示も目につく。TCFDは企業に対し、5年かけて十分な開示レベルに達することを求めている。今の情報開示としては、問題ない。だが、年を経るごとに情報を充実することが迫られる。一歩進んで、リスクと機会が将来の事業活動や財務活動への影響を示すことや、自社の経営をどう舵取りするかの戦略を示すこと、そして、事業環境がどのように変化しようと、柔軟に対処できる戦略の「強さ」を示すことまで、5年かけて対処できるようにする必要があろう。

■ TCFDが企業に求める行動と開示の例
出所:TCFD「Recommendations」
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 これは経営層や事業部が関与しなければ実現できない。サステナビリティ担当者を中心にTCFD開示に取り組むのでは、CSRや評判リスク対策として気候変動に取り組むのと変わりない。そのレベルから脱し、他部門を含む社内横断的な組織で議論し、最終的には取締役会が戦略的に気候リスクに対応するように体制を整える必要がある。経営者の関与は必須とし、当事者は多い方がいい。

 こうしたTCFD対応の当面の課題を整理したのが下の図だ。この4つに、すぐに対応するのは難しい。しかし完全な開示にこだわることも勧めない。開示に前向きな姿勢を示す事も重要だ。

■ 投資家に評価されるTCFD対応

 開示した情報を基に、企業と投資家の対話が進む。そうするうち、投資家が何に関心を寄せているかが分かり、開示が洗練されるだろう。

「日経ESG」(2019年4月号)では、TCFD情報開示に取り組む企業事例などさらに詳しく紹介しています。