■SGイメージランキング
「社会へのインパクト」がブランド価値を上げる

 企業の「社会・ガバナンス」分野のイメージを尋ね、そのスコアを算出する「SGイメージランキング」。2017年に開始した調査で、今年3回目を実施するに当たって設問を変更した。主な変更点は、「法令を順守する社内体制」や「情報セキュリティの体制整備」などガバナンスに関する設問の選択肢を増やしたことだ。

 設問が異なるため、今年の順位を前年と単純に比較することはできないが、ランキング上位に大きな変動はなく、前年のトップテンのうち8社が今年も顔をそろえた。1位はトヨタ自動車で、スコアは127.7と圧倒的な強さを見せる。2位のサントリー(84.9)は、3位のパナソニック(84.6)を僅差でかわし、昨年と順位が入れ替わった。

日本初の人権報告書が話題に

 注目すべきは、4位に入った全日本空輸(ANA)。今年加わったプラスイメージを尋ねる設問「法令を順守する社内の体制が整備されている」で、トヨタ自動車に次ぐ2位に入り、スコアを押し上げた。けん引役として、ANAが昨年公表した日本企業初の「人権報告書」が挙げられる。

 「2015年に東京五輪の公式パートナー企業に決定したことが、人権への対応を加速する契機になった」とANAホールディングス CSR推進部の宮田千夏子部長は話す。世界の眼が東京に向けられ、多くの訪日客を迎える2020年、エアラインとして五輪レガシーをつくることに意義を感じたという。

 「人権報告書を作成する際には、リポーティングのフレームワークを分析し、求められている情報に対して忠実に答えることを心がけた」と宮田氏。国内外の人権専門家と対話を重ね、ANAにとっての重要な人権テーマとリスクを特定し、それぞれの対応を記していく。

海外の人権専門家との対話
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 人権テーマの中でも強いインパクトをもたらしたのは、「航空機を利用した人身取引の防止」だ。国際労働機関(ILO)によれば、2017年に世界で人身取引によって強制労働の被害に遭っている人数は年間約2500万人。日本においても対岸の火事ではなく、2016年に50人が人身取引の被害者として保護されたという。ANAでは米国のNPOと連携し、人身取引を未然に防止するためのプログラムを今年の4月に導入した。

 もうひとつ、ANAのSGイメージスコアのアップに貢献したのが、「女性の活躍の推進」(3位)だ。女性が社員の56%を占める同社は、女性のキャリアを支援するきめ細かな制度や仕組みが整備されている。

 例えば、「わくわく休職制度」。語学の勉強や留学、ボランティアや福祉に携わるといった目的で、最大2年間休職できる。「ライフスタイルが多様化する中、もっと学びたい、活動の幅を広げたいという声が多く聞かれるようになった。この制度を利用してスキルと知識を磨き、復職したときに会社に還元してくれれば、会社の成長にもつながる」と、ANAダイバーシティ&インクルージョン推進室の宇佐美香苗室長は狙いを語る。

 女性にとっての大きなライフイベントである「仕事と育児の両立」を支援するセミナーも好評だ。ロールモデル社員によるパネル討論には男性も登壇、家族みんなで両立を考える貴重な機会になっている。

 こうした数々の取り組みが評価され、ANAは今年、女性活躍を推進するNPOが主催する「J-Winダイバーシティ・アワード/アドバンス部門」大賞を受賞した。「8年越しのチャレンジで大賞を受賞できた。J-Winとの議論は、体制づくりに大いに役立った。これからも社員一人ひとりが自分の強みを発揮できる環境づくりに取り組んでいく」と、宇佐美室長は抱負を語る。

「仕事と育児の両立支援セミナー」を定期的に開催
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2019年「J-Winダイバーシティ・アワード」大賞を受賞
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 今年、ガバナンスに関する設問の選択肢を増やしたことで、金融機関や大手IT企業が軒並みランクアップする傾向が見られた。

 金融機関では三井住友銀行がトップになった。「顧客情報やプライバシーの保護に取り組んでいる」のプラスイメージで1位、「法令を順守する社内の体制が整備されている」で4位に入るなど4つの項目でトップテン入りした。