聞き手/馬場 未希

企業が経営と気候対策の統合とその情報開示に着手し始めた。世界7000社から収集した取り組みの実情をCDPのトップに聞いた。

――CDPは2018年も世界の大手企業の経営者に対して「気候変動」や「水セキュリティ」「森林資源」に関する質問書を送り、各社の取り組みを調査しました。例年なら秋ごろ、回答に基づいて企業を評価した「スコア」を発表しますが、2018年分の発表は遅れました。

ポール・シンプソン
CDP CEO
CDPのCEO兼共同設立者。We Mean Business理事会、国際統合報告評議会(IIRC)委員、オックスフォード大学スミス企業環境大学院のグローバル座礁資産諮問委員会役員などを務める。過去にチェシャム・アマルガメーションズ・アンド・インベストメント、エコロジーと文化の国際協会(ISEC)、ソーシャルベンチャーネットワークなどに従事(写真:中島正之)

ポール・シンプソン 氏(以下、敬称略) 2018年から「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に基づく新たな質問を加えたことから、企業からの回答期限を遅らせたり、集計や分析に時間を要したりしたため発表が遅れました。

 2017年の気候変動の質問書には6251社が回答しましたが、2019年は6937社が回答するなど企業数が11%増えたことも遅れの原因です。とはいえ、投資家が閲覧できるデータの数と質が大きく向上しています。

――2017年末にシンプソンCEOにインタビューしてから約1年の間に、世界で気候変動への対応が勢いを増しています。その1つが、TCFDの提言に基づく情報開示に着手する企業が増えたことです。CDPが今回の気候変動の質問書に、TCFD提言に基づく質問を加えたことが大きく影響しているとみています。企業の回答状況はいかがでしたか。

シンプソン TCFDへの対応については良い成果が見られました。今回、気候変動に関する通常のCDPの質問に加えて新たに25問のTCFD提言に関わる質問を追加しました。質問書に回答した約7000社の72%(約5000社)は、TCFDに関連する25問のうち、特にこの質問と特定することはできないのですが21問以上にしっかりと回答しました。

 多くの企業が回答できたのは、これまでもCDPが尋ねてきた質問をTCFD提言にのっとって整理し直した事も影響しているでしょう。企業にとっては、回答し慣れた質問だったのですね。

 ただ、今回新たに尋ねたTCFDが求める「シナリオ分析」については、取り組みが十分ではないようです。これから作業に着手し、進める段階の企業が多いとみています。